第66話 第二回収穫祭
二年目の、収穫祭の日が、来た。
去年は、村人だけの、ささやかな、内輪の祭りだった。
今年は、違った。辺境の、三つの村から、視察団が、来ていた。それぞれ、五人から、十人。「噂の、見本村を、見に来た」のだ。ダールム村の名は、辺境の中で、知られ始めていた。
◇
広場の、テーブルには、食べ物が、並んでいた。
去年とは、量も、種類も、まるで、違った。
「去年は、麦粥と、塩漬けが、メインだったのにな……」
住民の一人が、しみじみと、言った。焼きたてのパン。野菜のスープ。豆の煮込み。焼いた肉まで、あった。
視察団の者たちが、驚いていた。
「本当に……廃村だったのか、この村が」
◇
ミリアが、視察団に、農業の説明を、していた。
「土に、堆肥を入れて、栄養を、戻します。それから、植える作物を、毎年、変える。輪作です。それと、水路を、整備して――」
すらすらと、自分の言葉で、語っていた。質問にも、よどみなく、答えている。
俺は、横から、補足しなかった。ただ、見守っていた。
ミリアは、もう、一人で、農業を、語れる。一人で、教えられる。それを、見ているだけで、十分だった。
◇
ラナが、祭りの中心で、食事を、とっていた。
俺は、その隣に、腰を下ろした。
「去年も、ここで、食べましたね」
「ああ」
「去年と、違うのは?」
ラナは、少し、考えてから、言った。
「……全部だな」
短い、言葉だった。だが、その「全部」に、どれだけのものが、込められているか。俺には、分かる気が、した。
◇
視察団の一人が、住民に、言った。
「来年の、収穫祭にも……来ても、いいですか」
「いつでも、来てください」
住民が、誇らしげに、答えた。
かつて、誰からも、見向きもされなかった村に、人が、「また来たい」と、言う。「ダールム村は、続く」――それは、もう、確かなことに、なっていた。
◇
祭りが、佳境に、なった頃。
ラナが、俺の袖を、引いた。
「少し……外に、出ないか」
俺は、立ち上がった。
「農地の方へ、行こう」
ラナが、言った。
「また、別の時に」と、言っていたラナが――今、自分から、誘っていた。
俺は、静かに、ついていった。




