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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第65話 ラナと農地を歩く

その日、珍しく、ラナの方から、声を、かけてきた。


「農地を、歩くか」


「ちょうど、いい時間です」


俺たちは、並んで、農地を、歩き始めた。秋の、夕暮れだった。刈り取りの終わった畑に、長い影が、伸びていた。



区画Aの前で、ラナが、足を止めた。


「ここは、三十年前……小麦が、一番、よく育った場所だった」


懐かしむような、声だった。


「だが、その後、何年も、続けて、同じ小麦を、植えた。よく穫れるから、と。そうしたら――だんだん、駄目になった。何を、植えても、育たなくなった」


連作障害。今なら、その理由が、分かる。だが、当時の村は、それを、知らなかった。


「今は、どうですか」


ラナが、麦の切り株を、見下ろした。


「……今年の小麦は、三十年前より、穂が、太かった」



水路の前まで、来た。


ラナが、流れる水を、見ながら、言った。


「この水路を、最初に、作ったのは、俺の、祖父の代だ」


水音が、静かに、響いていた。


「崩れたのは……俺の、代だ。村が、争って、誰も、直さなくなって。俺の夫も、それを、見ていた」


ラナは、一度、言葉を、切った。


「直したのも――お前と、一緒に。俺たちの、代だ」


壊したのも、直したのも、自分たちだ。かつて、俺が、言った言葉を、今は、ラナが、自分のものとして、口にしていた。



農地の、端を、子供たちが、走っていた。


トムと、アナと、その後ろを、センが、追いかけている。笑い声が、夕暮れの畑に、響いていた。


ラナが、それを、見ながら、言った。


「十年後……あの子たちが、ここを、作るんだな」


「そうなると、思います」


「……それを、俺が、見られるか、分からんが」


老人らしい、言葉だった。


俺は、珍しく、即座に、言った。


「あなたは、もう少し、生きますよ」


ラナが、少し、笑った。



しばらく、二人で、子供たちを、見ていた。


ふいに、ラナが、小さく、言った。


「……ありがとう」


俺は、聞き返した。


「何のこと、ですか」


ラナは、答えなかった。


代わりに、こう、言った。


「また、別の時に、話す」


そして、農地の方へ、ゆっくりと、歩いていった。


その背中を、俺は、見送った。「また別の時に」――その言葉が、なぜか、胸に、残った。



収穫祭は、明後日だった。


今年は、辺境から、「見に行きたい」という使者が、三件も、届いていた。


「こんなに、人が、来るのか」


ウォルトが、驚いていた。


「来年は、もっと、来ます」


俺は、答えた。


ダールム村は、もう、「廃村」では、なかった。


辺境の――「見本の村」に、なっていた。

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