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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第64話 ミリアの自立宣言

二年目の記録が、すべて、整理された、翌日。


ミリアが、俺のところへ、来た。


「本当に、話が、あります」


この前の、続きだと、すぐに、分かった。


「聞かせて、ください」



ミリアは、深く、息を、吸ってから、言った。


「グリムの、先の村に……十年前から、農業が、うまくいっていない、集落が、あります。そこへ、行って、指導してきたいです」


「一人で?」


「レイム様に、習ったことを、全部、持っていきます。農業記録帳の、副本も。足りないことがあれば、連絡します」


その目は、まっすぐだった。思いつきでは、ない。ずっと、考えていた言葉だった。



「なぜ、そこを、選んだんですか」


俺が、聞くと、ミリアは、少し、間を置いて、答えた。


「……お父さんと、お母さんが、飢えで、死んだのは。農業が、続かなかったからです」


静かな、声だった。


「私は、ここで、土を、変える方法を、学びました。死にかけた畑が、よみがえるのを、見ました。――それを、使える場所が、あるなら。同じように、苦しんでいる村が、あるなら。私は、行きたい」


両親を、救えなかった土地。その悔しさを、ミリアは、他の村を、救うことで、超えようと、していた。亡くした人への、彼女なりの、答えだった。



俺は、しばらく、ミリアを、見ていた。


そして、言った。


「……行きなさい」


ミリアが、目を、見開いた。


「それだけ、ですか」


「それ以上、言うことが、ありません。あなたは、もう、十分に、学んだ。土の見方も、記録の取り方も、人への伝え方も。――あとは、自分で、経験を、積む段階です」


引き留める、理由は、何も、なかった。それは、教えた者として、最も、誇らしい、結論だった。



「でも」俺は、付け加えた。


「分からないことが、あったら、連絡してください。一人で、抱え込まないで」


「連絡……できますか。遠くからでも」


「ウォルトを、通せば、どこにいても、届きます。俺が、辺境のどこにいても、です」


ミリアの目が、潤んだ。


「……ありがとう、ございます」



ミリアが、立ち上がった。


「ラナさんに、話してきます」


そう言って、農地の方へ、歩いていった。


俺は、しばらく、その後ろ姿を、見ていた。


前世で、二十二年、農業の仕事を、してきた。けれど、「弟子」と、呼べる人間を、育てたことは、一度も、なかった。いつも、一人で、現場を、回って、一人で、去っていった。


ここで、初めて――。


何かを、次の手に、渡した、という感覚が、あった。


それは、前世も含めて、初めての――最も、良い、終わり方だった。

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