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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第58話 静かな勝利の後

辺境伯一行が、去った、翌日。


農地では、いつも通りの、農作業が、行われていた。


ミリアが、俺のところへ、来た。


「今日の、肥料を、入れるタイミングを、確認したいんですが。区画Cの土が、少し、乾いてきていて」


俺は、思わず、笑いそうになった。


昨日まで、辺境伯と、ヴィンスと、村の命運を、かけて、やり合っていた。それが、一夜明ければ、肥料を入れる、タイミングの話だ。日常が、戻ってきていた。それが、何より、嬉しかった。



ウォルトが、伸びを、しながら、言った。


「やっと、普通に、働けますね」


老人たちは、畑の隅で、話し込んでいた。


「次の、春まきは、何にする」


「カブが、いいんじゃないか。去年、よく穫れた」


村長も、農地に、出ていた。珍しく、穏やかな顔で、麦の様子を、見ている。かつて、俺を、最も疑った男が、今は、自分の村の畑を、愛おしそうに、見ていた。



ラナが、鍬を、手に、近づいてきた。


「五十年で、初めてだ」


ぽつりと、言った。


「この村の、外から、『よい農業を、している』と、言ってもらえた。辺境伯に、だぞ。あの、辺境伯に」


「ラナさんたちの、農業ですよ」


俺は、言った。


「俺じゃ、ない。皆さんが、続けてきた、農業です。俺は、きっかけを、作っただけだ」


ラナは、少し、黙ってから、言った。


「……そうだな」


そして、また、畑に、戻っていった。



その日の午後、辺境伯府から、正式な、辞令状が、届いた。


「辺境農業改良使」としての、辞令だった。


俺が、読み、ウォルトが、横から、覗き込んだ。


「これは……また、来てほしい、という意味でも、ありますね。他の村にも」


「そうなりますね」


「受けるんですか」


「いずれは。でも、今は、ここが、先です」



辞令状を、しまいながら、俺は、思った。


ここが、落ち着いたら、次の、荒れた土地を、見に行く。それが、俺の、仕事だ。前世から、ずっと、そうだった。


でも、今は――。


二年目の収穫が、終わるまでは、ここに、いる。


この村が、本当に、自分の足で、立つところまで。最後まで、見届けたい。


そう、思った。



二年目の収穫が、近づいていた。


区画Aの麦は、今年の春まきから、育てたものだ。去年よりも、さらに、株が、しっかりと、立っている。


アナが、記録帳を、抱えて、言った。


「今年は、絶対、もっと、多いです」


「確かめてから、言いましょう」


「でも、レイム様も、そう思って、ますよね」


俺は、麦の穂を、見た。


……そうだな。


そう、思っている。

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