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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第57話 記録帳を渡す

翌日、俺は、アナが書き写した、記録帳の副本を、ヴィンスに、手渡した。


「全部、入っています」


ヴィンスが、それを、受け取った。


「土壌の、診断の方法。堆肥の、作り方。輪作の、順番。水路の、修理の仕方。――俺が、二十五年かけて、学んできたことが、全部、ここにあります」


ヴィンスが、ページを、めくった。びっしりと、書き込まれた、記録を、見ていた。



「もし」俺は、言った。「管轄内に、使えそうな、廃村が、あれば、声を、かけてください。俺が、行けるかどうかは、分かりませんが――相談には、乗ります」


ヴィンスが、顔を、上げた。


しばらく、俺を、見てから、ふっと、息を、吐いた。


「……お前は、不思議な、やつだな」


その声に、もう、敵意は、なかった。



その朝、辺境伯も、俺を、呼んだ。


出発の、前だった。


「レイム。他の分領の、農業改良にも、協力して、ほしい。今後、正式に、辺境伯府から、依頼を、出す」


辺境伯は、まっすぐ、俺を、見た。


「辺境の、農業改良使として、動いてもらいたい。お前の、知識は、ダールム一つに、留めておくには、惜しい」


俺は、すぐには、答えなかった。


「……考えさせて、ください。今は、まだ、この村が、途中なので」


辺境伯は、それを、聞いて、わずかに、口の端を、上げた。


「いい返事だ。自分の村を、放り出さない男なら、信用できる」



辺境伯一行が、出発した。


村人全員が、見送りに、出た。


馬車が、動き出す。ヴィンスが、馬上から、一度だけ、俺の方を、見た。


俺は、軽く、頷いた。


ヴィンスも、ほんの少し、頷き返して、前を、向いた。



一行の姿が、小さくなっていく。


ウォルトが、隣で、言った。


「これで……終わり、ですね」


「いいえ」


俺は、答えた。


「辺境の、仕事の話が、来ました。農業改良使、として」


ウォルトが、目を、丸くした。


「……また、始まりですか」


「また、始まりです」



辺境伯たちが、見えなくなった後。


ラナが、俺の横に、来た。


「終わったな」


「一段落、です」


「次は、どこへ、行く」


俺は、しばらく、考えた。


「まだ、ここに、います。二年目の収穫が、終わるまでは」


ラナが、低く、言った。


「……そうか」


その「そうか」の中に、何か、複雑なものが、混じっている気が、した。

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