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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第56話 ヴィンスの本音

俺は、ヴィンスを、農地の外れに、連れていった。


麦畑の、いちばん端。他には、誰もいない、場所だった。


「ここなら、話せます」


ヴィンスは、腕を組んで、こちらを、見ていた。まだ、警戒の、色があった。



「あなたが、管轄権を、求めた理由を、教えてほしかった」


俺は、切り出した。


「ウォルト経由で、聞こえてきた理由は――後継者の座を、守るため、でした。俺が、廃村を立て直して、評価されれば、自分の立場が、危うくなる、と」


ヴィンスは、答えなかった。


俺は、待った。畑を、風が、渡っていった。



長い、沈黙の後。


ヴィンスが、ぽつりと、言った。


「……羨ましかった、だけだ」


意外な、言葉だった。


「お前は、あの父親から、『廃村を、任せる』と、言われた。俺は、『後を、継げ』と、言われた。――どちらが、楽か、分かるか」


ヴィンスの声には、いつもの、棘が、なかった。


「後を継ぐ者は、何かを、一つでも、失敗したら、終わりだ。すべてを、背負って、一つの失点も、許されない。お前は、失敗しても、別の廃村に、行けばいい。やり直せる。――俺には、その自由が、なかった」



俺は、すぐには、何も、言わなかった。


否定も、同情も、しなかった。


ただ、その立場を、想像した。生まれたときから、逃げ場のない、重圧。失敗の、許されない人生。それは、確かに、楽ではない。


「……そうか」


俺は、それだけ、言った。


「そういう、立場だったのか」


ヴィンスが、少し、驚いたように、俺を、見た。慰めも、説教も、なかったからだろう。



「廃村の、農業改良の、やり方は」俺は、言った。「記録帳に、全部、あります。あなたが、使いたければ、使っていい」


ヴィンスが、眉を、寄せた。


「……俺が、廃村を、任されるわけでも、ないのに」


「でも、そういう立場の人を、部下に、持つ可能性は、あります。後を継げば、なおさら。そのとき、この記録が、あなたの、役に立つ」


それは、感情の、和解では、なかった。実務的な、提案だった。だが、ヴィンスのような人間には、そのほうが、届く気が、した。



ヴィンスは、しばらく、麦畑を、見ていた。


それから、踵を、返した。


去り際に、一度、振り返って、言った。


「……記録帳は、本当に、使っていいのか」


「はい。持っていって、ください」


ヴィンスが、また、歩き出した。


その背中が、少し、変わった気が、した。


完璧に、理解し合った、わけじゃない。和解した、とも、言えない。


でも――話したことで、何かが、変わった。


それで、いいと、思った。

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