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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第55話 辺境伯の決断

翌朝、辺境伯は、正式な場を、設けた。


ウォルト、ヴィンス、そして、俺が、呼ばれた。村長と、住民の代表も、同席していた。


辺境伯は、全員を、見回してから、口を、開いた。



「ダールム村の、農業改良の成果を、確認した」


落ち着いた、声だった。


「記録は、誠実であり、収穫量の回復は、実証されている。土地も、住民も、確かに、立ち直っている。――この管轄を、レイムから、移転する理由は、ない」


辺境伯は、はっきりと、言い切った。


「以後、ダールム村は、引き続き、レイム・ダールムの、管轄とする」


俺は、深く、頭を、下げた。



だが、辺境伯の言葉は、そこで、終わらなかった。


「さらに、言えば」


辺境伯が、記録帳を、手に取った。


「この農法と、記録管理の方法は、他の分領にも、有用だろう。土を、調べ、堆肥を入れ、輪作で、回す。記録を、残し、人を、育てる。――ダールム村は、辺境の、農業改良の、模範に、なり得る」


辺境伯は、俺を、見た。


「廃村寸前だった村が、模範になる。それは、辺境伯府の、利益でもある。よくやった」


赤字の、お荷物だった村が、辺境の、手本になる。それは、誰も、想像しなかった、逆転だった。



辺境伯は、ヴィンスに、向き直った。


「ヴィンス」


「……はい」


「お前の、管轄権申請は、却下する。今後、この件で、同様の申請は、一切、受け付けない。分かったな」


ヴィンスが、唇を、噛んだ。


何か、言いたげに、口を、開きかけて――やめた。父の言葉は、決定だった。覆る余地は、なかった。



住民たちの間に、静かな、震えが、走った。


ラナが、そっと、目を、閉じた。


涙では、なかった。五十年、この土地と、生きてきた女が、ようやく、報われた。その重さを、ただ、噛みしめるように――静かに、目を、閉じていた。


ミリアは、必死に、涙を、こらえていた。


俺は、一言だけ、言った。


「ありがとう、ございます」


それ以上の言葉は、要らなかった。


「勝った」という、感覚は、なかった。ただ――「認められた」という、静かな満足が、胸の底に、あった。



決定が、終わった後。


ヴィンスが、立ち去ろうと、した。


俺は、呼び止めた。


「少し、話しても、いいですか」


ヴィンスが、振り向いた。目には、まだ、険が、あった。


「何の、話だ」


「ここでは、言えない話です。場所を、変えて、もらえますか」


ヴィンスが、しばらく、俺を、見た。


そして――。


「……いい」


と、言った。

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