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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第51話 辺境伯が来た

その日、村に、馬車の列が、到着した。


辺境伯、本人。随行の騎士。文書官。そして――ヴィンスも、同行していた。


辺境伯は、五十代の、男だった。穏やかな物腰だが、目だけが、鋭い。実務の人間の、目だった。ヴィンスは、その横で、険しい顔を、していた。


ダールム村の住民が、全員、出迎えた。



辺境伯は、村を、ぐるりと、見回した。


「……思ったより、整っているな」


最初の、言葉だった。


すかさず、ヴィンスが、横から、口を挟んだ。


「まだ、視察をしていない段階で、ご判断は、できかねます。表面だけ、取り繕った可能性も、あります」


辺境伯が、軽く、うなずいた。


「そうだな」



俺は、進み出て、頭を下げた。


「お越しいただき、ありがとうございます。農地と、農業記録を、ご覧いただけますか」


それ以上は、言わなかった。長い口上も、自慢も、しなかった。辺境伯のような人間に、言葉を尽くしても、意味がない。見せれば、分かる。


「……そうしよう」


辺境伯が、歩き出した。



一行が、農地へと、歩いていく。住民全員が、固唾を、のんで、見守っていた。


ラナは、農地の端に、静かに、立っていた。動じる様子は、なかった。


ヴィンスが、ウォルトに、聞こえるように、言った。


「……こんな、小さい農地の話だったのか。わざわざ、父上を、呼びつけて」


ウォルトの、頬が、こわばった。だが、何も、言わなかった。



農地に着くと、辺境伯が、足を止めた。


水路の、水音が、聞こえていた。


「この水路、最近、直したのか」


「はい。今年の冬に、手作業で」


辺境伯が、片眉を、上げた。


「魔法なしで?」


「はい」


辺境伯は、しばらく、流れる水を、見ていた。


「……そうか」



辺境伯は、水路の端で、立ち止まった。


水に、手を入れて、水量を、確かめている。実務の人間の、仕草だった。


「……これだけの流量が、農地まで、来ているのか」


「はい」


「一年前は、どうだった」


「水路は、崩れていて、雨だけに、頼っていました。畑の半分は、使えませんでした」


辺境伯が、低く、言った。


「ふむ」


その「ふむ」が、どういう意味か。


俺には、まだ、分からなかった。

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