表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/70

第49話 二年目の秋まき

二年目の、秋まきの、前日だった。


俺は、ふと、一年前を、思い出していた。


去年の、この時期。麦の種を、まいたのは、俺と、ミリアの、二人だけだった。住民は、誰も、信じていなかった。「どうせ、また、ダメだ」と。区画も、改善できていたのは、たった一区画。区画Bだけだった。


今年は、違う。


全員が、いる。そして、四つの区画は、すべて、改善済みだ。



「今年の種は」俺は、ミリアに言った。「去年の、収穫から、選んだ種です。一番、いい穂から、採ったもの。だから、去年より、質がいい」


「種苗管理の、成果ですね」


ミリアが、当たり前のように、専門用語を、使った。一年前は、「土壌」という言葉すら、知らなかった少女が。


横で、アナが、農業記録帳に、書き込んでいた。


「二年目の、秋まき。選別種子、使用、っと」


丁寧な、きれいな字だった。記録係の、仕事だった。



種をまいていると、ラナが、隣に来た。


しばらく、黙って、手を動かしてから、ぽつりと、言った。


「去年の、今頃……俺は、廃村の、話し合いを、しようとしていた」


その声は、静かだった。


「この村を、どう、たたむか。それを、考えていた」


「今年は」俺は、聞いた。「何の話を、していますか」


ラナが、手を止めた。少し、間を置いて、答えた。


「……来年の春に、何を、植えるか、だ」


たたむ話から、植える話へ。一年で、村が、見ている方向が、変わっていた。



種まきは、全員で、進んだ。


俺が、指示しなくても、住民は、自分の担当区画を、把握して、動いていた。誰が、どこを、どうするか。もう、決まっている。


「……俺が、いなくても、回るな」


そう思って、見ていると、なぜか、胸が、温かくなった。寂しさでは、なかった。これこそが、普及員の、目指すところだった。教えた相手が、自分の足で、立つこと。



その日の夕方、公式の使者が、来た。


「辺境伯が、来月、ダールム村を、視察される」


ついに、来た。


全員が、緊張で、息を、のんだ。長く待った、決着の時が、近づいていた。


俺は、静かに、頭を下げた。


「見ていただけるなら、それで、十分です」



使者が、去った後。


俺は、農地を、見渡した。


水路が、動いている。麦の種が、地面の中にある。記録帳が、積まれている。


見せられるものは、全部、ここにある。


あとは――ここに、来てもらうだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ