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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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40/70

第40話 グライへの答え

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

俺は、農業記録帳を、グライの前に、広げた。


「収穫量は、去年の、二・三倍。これが、その記録です」


ページを、めくった。


「区画ごとの、土壌の状態。水路を通した後の、使える農地の面積の変化。すべて、数字で、残してあります」


グライは、しばらく、無言で、記録帳を読んでいた。商人の目で、一つひとつの数字を、検めていた。


やがて、顔を上げた。


「……思ったより、本物だな」


率直な、評価だった。



だが、グライは、すぐに、鋭いところを、突いてきた。


「だが、これは、あなたがいるから、出た成果だ。あなたが、この村を去れば――また、元に戻る可能性もある。違いますか」


それは、もっともな、指摘だった。一人の人間に依存した成功は、もろい。商人として、当然の、見方だった。


俺は、答えなかった。


代わりに、答えたのは、ミリアだった。



「私が、継ぎます」


ミリアが、前に出た。


「農業の理論は、分かっています。なぜ、こうするのか。土が、何を求めているのか。レイム様に、教わりました。記録も、全部、あります」


グライが、ミリアを見た。


「一人では、難しいかもしれません。でも、私一人で、やるんじゃない。村の、全員で、やります。もう、やり方を、知っているから」


弟子だったミリアが、今、自分の言葉で、村の未来を、語っていた。俺は、何も、言わなかった。これは、ミリアの言葉だった。



そして、住民たちが、口々に、言い始めた。


「売りません」


「ここは、俺たちの、村だ」


一人、また一人と、自分の言葉で、断っていく。誰かに言われたからではない。自分で、決めた言葉だった。


最後に、ラナが、低い声で、言った。


「ここは、俺たちの、土地だ」


その一言が、すべてを、締めくくった。



グライは、しばらく、住民たちの顔を、見回していた。


それから、ふっと、笑った。今度は、目も、笑っていた。


「……分かりました。合理的な、判断ですね」


彼は、記録帳を、俺に返した。


「無理に買い叩いて、嫌々運営させるより、ずっといい。自分たちで稼ぐ気のある村は、強い」


立ち上がり、去り際に、こう言った。


「いずれ、成功した村と、正規の取引を、することになるかもしれない。麦が余れば、買い手がいる。その時は――よろしく」


それは、捨て台詞では、なかった。商人としての、次の一手だった。


「ありがとうございました」


俺は、頭を下げた。グライは、片手を上げて、馬に乗り、去っていった。



グライが去った、翌日。


辺境伯からの、文書が届いた。


ウォルトが、受け取って、開封した。読み進めるうちに、その顔が、少し、固まった。


「……ヴィンス様から、父上――辺境伯に、申し出が、あったそうです」


「申し出?」


「『ダールム分領の、管理権を、自分に移すよう』、と」


来た、と俺は、思った。


グライの件と、連動している。


これは、偶然じゃない。

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