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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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39/70

第39話 第一回収穫祭

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

村の広場に、収穫したものが、並べられた。


石畳の空き地に、麦の束、野菜、保存食。長いこと、使われていなかった広場に、人が集まり、煙が立ち、笑い声が、響いていた。


老人たちが、感慨深そうに、言った。


「こんな収穫祭は……十年ぶりだ」


「いや、もっとかもしれん。ここまでの収穫は、な」



収穫した麦で焼いたパンが、並んだ。


この村で、麦から作った、初めてのパンだった。野菜のスープ。焼いた芋。どれも、湯気を立てている。


「これ、全部……村で、作ったものだ」


老人の一人が、パンを手に取って、しみじみと言った。


「買ったものじゃ、ない。施しでも、ない。自分たちで、作ったものだ」


その手が、少し、震えていた。



子供たちは、走り回っていた。


トムが、麦のパンを、頬張りながら、叫んだ。


「おいしい! 麦って、こんなになるんだ!」


アナは、パンを両手で持って、じっと見つめていた。


「私が、肥料をあげた畑の、麦で作ったパンを……食べてる」


そう言って、目を潤ませた。土に名前の板を立て、芽に話しかけていたアナにとって、それは、特別なパンだった。


少し離れたところで、センが、黙ってパンを食べていた。


俺が見ていると、センは、小さく、言った。


「……おいしい」


初めて、聞く言葉だった。あれほど、心を閉ざしていたセンの、最初の感情だった。



ミリアは、広場の端に、座っていた。


俺は、その横に、腰を下ろした。同じ方向を、向いて。


ミリアが、ぽつりと言った。


「親に……食べさせたかった」


泣いては、いなかった。でも、その目は、潤んでいた。


俺は、何も、言わなかった。言葉は、いらなかった。ただ、同じパンを、同じ場所で、食べていた。



賑わう広場を、眺めながら、俺は、思った。


これを届けるために、前世で農業の仕事をしてきた――と言ったら、嘘になる。あの頃は、ただ、目の前の仕事を、こなしていただけだ。


でも。


こういう場面を、見るために、俺は、土と、向き合ってきたのかもしれない。


笑い声。湯気。子供の足音。麦の匂い。


ここにいる理由が、分かった気が、した。



収穫祭の、翌日。


グライが、約束通り、やってきた。


答えを、聞きに来た顔だった。


俺は、農業記録帳を持って、彼と、向き合った。

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