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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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38/70

第38話 大麦収穫

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

夜明けとともに、全員が、農地に集まった。


老人も、子供も、来ていた。誰もが、改善した鎌を、手にしている。空気が、張りつめていた。期待と、緊張と、そのどちらでもない、何かで。


ラナが、前に出た。


麦の前に立ち、しばらく、穂を見つめてから、低い声で言った。


「さあ、やるか」


そして、最初の一刈りを、した。


鎌が、麦の根元を、すっと、切った。きれいな音だった。束になった麦が、ラナの腕に、倒れ込む。


それが、合図だった。



全員が、一斉に、刈り始めた。


改善した鎌は、軽い力で、麦の根元を、きれいに切っていく。あちこちで、声が上がった。


「速い!」


「去年と、全然違う! こんなに楽なのか!」


老人も、子供も、夢中で刈っていた。村全体が、生き生きと、動いていた。荒れた畑に、初めて来た日の、あの沈んだ空気は、どこにもなかった。


刈った麦を、束にして、積んでいく。山は、見る間に、高くなっていった。



刈り終えた麦を、束にして、計量した。


数えながら、俺は、ある事実に、気づいた。


「区画Bだけで……去年の、全農地の収穫量を、超えている」


改善した一区画だけで、去年の村全体の収穫を、上回っていた。


すべての計量が、終わった。俺は、住民の前で、数字を、読み上げた。


「合計収穫量は、去年の、二・三倍です」


しんとした。


老人の一人が、ゆっくりと、繰り返した。


「二・三倍……」


しばらく、誰も、何も言わなかった。歓声では、なかった。みんなが、その数字を、必死で、飲み込もうとしていた。長く、諦めの底にいた人間には、その数字が、大きすぎたのだ。



やがて、老人が、一人、ぽつりと言った。


「……ちゃんと、できた」


その声が、震えていた。


「ちゃんと、できたよ……」


それから、泣き始める者が、出た。肩を震わせ、麦の束に、顔をうずめる者もいた。


ミリアは、空を、見上げていた。


「お父さん……お母さん。見えてますか」


その目から、静かに、涙が、こぼれていた。


俺は、何も、言わなかった。


アナが、刈ったばかりの麦を、両手で抱えて、言った。


「麦って……本当に、きれいな色だね」



収穫が終わると、村長が、ウォルトに言った。


「この数字、本物か、確認してくれ」


ウォルトが、答えた。


「はい。私も、計量に、立ち会いました。正確です」


村長が、俺を、見た。


その目が、少し、潤んでいた。


「……ご苦労、だったな」


それだけの言葉だったが、俺には、十分だった。

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