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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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37/70

第37話 収穫の前夜

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

麦の穂が、黄金色に、実っていた。


風が吹くたびに、畑全体が、波打つように揺れる。ずっしりと、頭を垂れた穂。それは、土の力が、目に見える形になったものだった。


ミリアが、一本の穂を、手のひらに乗せた。


「明日、刈って、いいですか」


「刈りましょう」


俺は、うなずいた。


「全員参加で、お願いします。これは、村全体の仕事だから」



その夜、俺は、一人で、農地を歩いた。


月明かりの中、穂が、静かに揺れている。眠れなかった。前世でも、収穫の前夜は、いつも、こんな気持ちだった。


歩きながら、この村に来てからの日々が、浮かんでは消えた。


初めて来た日の、荒れきった畑。背を向けたまま、振り返らなかったラナ。堆肥を「汚い」と顔をしかめた住民たち。病に倒れ、立ち枯れた区画。そして――水路に、水が、流れた瞬間。


長い時間だった。土が変わり、村が変わった。そして、俺自身も、いつの間にか、変わっていた。


ふと、前世の、最後の記憶が、混じった。あの日、俺は、一つの仕事を、終えられないまま、土の上に倒れた。あの畑は、その後、どうなったのだろう。



穂を、一本、手に取って、重さを確かめていると、足音がした。


ミリアだった。


「眠れなくて」


そう言いながら、彼女も、穂を、そっと触っている。


「ちゃんと、実ってる。ちゃんと、重い」


確かめるように、何度も、手のひらで、穂の重さを、量っていた。


俺たちは、しばらく、黙って、月明かりの畑を見ていた。



「明日……うまく、いきますか」


ミリアが、ぽつりと聞いた。


「うまくいきます」


俺は、迷わず、答えた。


「根拠は」


「この穂の、重さです」


ミリアが、自分の手のひらの穂を、見つめた。それから、小さく、笑った。


「……信じます」


そう言って、彼女は、帰っていった。



ミリアが帰った後、俺は、農地に、しばらく残った。


穂を一本、手に取って、もう一度、重さを確かめた。


この重さは、土の重さだ。水の重さだ。堆肥の重さだ。


ここにいた全員の、仕事の重さだ。


明日、刈れる。

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