第24話 データで立て直す
本作は全70話で完結予定です。
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翌朝、俺は住民を集めた。
逃げずに、昨日の病害の原因を、全員の前で説明するためだ。
「昨日の病気の原因を、説明します」
俺は、区画Aと区画Bの土を、それぞれ手に取った。
「区画Aは、もともと水はけが弱い畑でした。気温が下がったあと、湿度が高くなった。その湿った状態を、俺が放置してしまった。これが、病気の出た原因です。これは、俺のチェックが遅れた、ミスです」
正直に、ミスを認めた。隠せば、信頼を失う。それは、前世で何度も学んだことだった。
「ですが、見てください。区画Bには、病気が一本も出ていない。同じ天気、同じ気温だったのに、です。なぜか」
俺は、二つの土を並べた。
「区画Bは、堆肥を入れて、有機物が増えています。土の中に、小さな命――目に見えない微生物が、たくさんいる。それが、病気を起こす菌を抑えてくれる。土そのものに、病気への抵抗力があるんです。これが、その証拠です」
老人の一人が、二つの土を、何度も見比べた。
「……本当だな。区画Bには、出ていない」
「だから、区画Aも、これから堆肥を入れて土を戻していけば、来年は、病気に強くなります。今回の被害は、改善が間に合っていなかった畑で起きた。それだけのことです」
◇
説明が終わると、すぐに対策にかかった。
被害を受けた区画には、ミリアが採ってきた薬草――ヨモギに似た現地の草を煎じた液を、散布した。病気の広がりを抑える効果がある。同時に、水はけを良くするため、畑の端に溝を掘った。
「広がるのを止める作業と、回復を助ける作業を、同時にやります」
言うだけじゃなく、その日のうちに、全部、手をつけた。
作業の途中、ミリアが、住民に向かって言った。
「区画Bには、病気が出なかった。つまり、レイム様の改善のやり方は、正しかったってことです。区画Aも、次の季節から同じようにすれば、強い畑になる。失敗じゃない。証明されたんです」
弟子が、師の代わりに、住民を説得している。俺は、横でそれを聞きながら、静かに嬉しかった。
ミリアは、ラナの方を向いた。
「分かった? ラナさん」
ラナは、しばらく黙ってから、ぽつりと言った。
「……分かった」
その一言には、重みがあった。
◇
夕方、村長が、俺のところへ来た。
「……原因が分かって、対策も分かるなら、それは、人間のやることだな」
渋い声だったが、昨日の怒りは、消えていた。
「正直、昨日は腹が立った。だが、ちゃんと説明できて、ちゃんと手を打っているなら……まあ、いい。続けろ」
「ありがとうございます」
村長は、ふんと鼻を鳴らして、帰っていった。
その背中を見送りながら、ラナが、ぽつりと聞いた。
「……次は、もう出ないのか」
「予防策を入れれば、出にくくなります。ゼロには、できません。でも、出ても、また対処できます」
「そうか」
ラナは、それだけ言った。
だが、俺には分かった。それが、ラナの信頼の、最初の一段だった。失敗しても、ちゃんと立て直す。その姿を見て、人は本当に、信じ始める。




