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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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22/70

第22話 ウォルトという人間

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

工事の二日目。


冬が近い。朝の空気は冷たく、息が白くなる。それでも、ウォルトは黙々と土を掘り続けていた。


騎士として鍛えた体は、村の老人たちより、ずっと多く土を運べる。一人で、三人分は掘っている。


「あの騎士さん、よく働くな」


老人の一人が、感心したように言った。


休憩のとき、ウォルトが、その老人に尋ねた。


「農業というのは、どのくらいやれば、身につくものなんですか」


老人は、しわがれた声で笑った。


「三十年じゃな」


「……三十年」


ウォルトが、絶句した。


「まあ、でも」老人は続けた。「覚え始めるのは、早いほうがいい。あんた、見込みがあるかもしれんぞ。土の運び方が、丁寧だ」


ウォルトは、なんとも言えない顔をしたが、満更でもなさそうだった。



別の休憩のとき、俺はウォルトが、子供たちに何か教えているのを見た。


近づくと、木の棒を剣に見立てて、トムに構え方を教えていた。


「いいか、こうやって構えると、転びそうになっても踏ん張れる」


「へえ! ウォルトかっこいい!」


トムが、目を輝かせている。


「ウォルトさん」ミリアが、後ろから声をかけた。「農業を手伝いながら、子供の護身まで考えてるんですか。……意外と、細かいですね」


「いや、これは、その」ウォルトが、慌てて棒を下ろした。「子供が、危ない目に遭わないように、と。それだけです」


ミリアは、くすりと笑った。



その夜、ウォルトが、ぽつりと打ち明けた。


「この村に来る前は、正直、思っていました。なぜ俺が、廃村の護衛なんかをやらなきゃいけないのかと。左遷も同然だと」


俺は、黙って聞いた。


「でも、今は……不思議と、ここにいる理由がある気がするんです。村が、少しずつ変わっていくのを、間近で見ていると。俺も、その一部になっている気がして」


「ウォルトさんが、必要だから、ここにいるんですよ」


俺は、そう言った。


「それだけです」


ウォルトが、こちらを見た。少し、驚いたような顔だった。


「……レイム様は、そういうことを、さらりと言うんですね」


「事実ですから」


ウォルトは、何か照れくさそうに、そっぽを向いた。だが、その横顔は、城を出たときより、ずっと穏やかになっていた。



工事は、三日目に入った。


冬の朝は、いっそう冷えた。それでも、朝から工事に来る人間は、少しずつ増えていた。


そして、その日。


ラナが、初めて工事の現場に来て、遠くから、じっと作業を見ていた。

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