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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第2話 四日間の旅路と、辺境の話

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

馬の上から見える畑は、どこも痩せていた。


「ひどいな」


思わず声が漏れた。隣を行くウォルトが振り返る。


「何がですか」


「あの畑です。同じ作物を、何年も続けて植えている。土の力を吸い尽くして、回復させていない。雨が降らなければ枯れるだけです」


街道沿いに広がる農地を、俺は片端から目で追っていた。畝の立て方、雑草の種類、土の色。見れば見るほど分かる。この世界の農業は、前世で言えば昭和の初め、いや、もっと前の水準だ。輪作という考え方が、そもそも根付いていない。


「レイム様は、本当に農業に詳しいのですね」


「仕事でしたから。前の」


口が滑った。ウォルトが怪訝な顔をする。十六歳に「前の仕事」もないものだ。俺は咳払いをして話を変えた。


「ウォルトさんは、農業改良普及員って言葉を聞いたことありますか」


「いえ、まったく」


「畑を回って、農家さんと話して、どうすれば作物がよく育つかを一緒に考える仕事です。命令はしません。土を見て、相手の話を聞いて、これならどうですかと提案する。それだけの仕事ですよ」


「それは……騎士よりずっと地味ですね」


「地味ですよ。すごく」


俺は笑った。ウォルトは笑っていいのか迷ったような顔をして、結局まじめにうなずいた。



その晩は街道沿いの小さな宿に泊まった。


出された夕食は、薄い麦粥と、塩辛い干し肉が数切れ。それだけだった。


「これが普通ですか」


「辺境では上等なほうです」


俺は粥をすすった。味は悪くない。ただ、貧しい。野菜がほとんどない。土地が痩せれば、食卓も痩せる。当たり前のことだが、こうして自分の腹で味わうと重みが違う。


「ダールムのことを、もう少し教えてもらえますか」


「人口は四十人と少し。ほとんどが年寄りです。若い者は街へ出てしまった。聞いた話では、今年の冬を越えたら、廃村にするかどうかを村で話し合うとか」


「今年中に、ですか」


「ええ。もう、限界なのだと思います」


時間がない、ということだ。一年ではなく、この秋から冬にかけてが勝負になる。俺は頭の中で、やるべきことの順番を組み直した。土壌改良、水路、種子。どれも時間がかかる。だが、できないことではない。


「ウォルトさんは、廃村になると思いますか」


ウォルトは少し黙ってから、正直に答えた。


「……分かりません。ですが、誰も助けに来なかった村です。今さら何が変わるのか、正直、私には見当もつきません」


「そうですか」


俺はそれ以上は言わなかった。言葉で説得しても意味がない。動いているものを見せるしかない。それが二十二年で学んだ、たった一つの確かなことだった。



四日目の昼過ぎ。


谷あいの道を抜けると、急に視界が開けた。山に囲まれた小さな盆地。その底に、ダールム村があった。


俺は馬を止めて、しばらく村を見た。


石造りの家が、二十軒ばかり。だがその半分は、煙突から煙が上がっていない。空き家だ。村を囲む農地は、どこも茶色く枯れたまま、耕された跡もない。


前世で、何度も見た光景だった。人が一人、また一人と抜けていき、最後に老人だけが残った村。畑が荒れ、家が傾き、それでも誰かがまだ、そこに住んでいる村。


「……やっぱり、そういう顔をしているな」


「何がです?」


「いえ。行きましょう」


馬を進めながら、俺は一つのことを確かめようとしていた。


ラナ、という名の老婆がいるとウォルトが言っていた。廃村寸前のこの村で、それでもまだ畑に出ている老婆だ。


そういう人を、俺は前世で何十人も知っている。


彼女が今も畑にいるなら――まず、その人と話すべきだ。土の話は、いつだってそこから始まる。

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