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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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18/24

第18話 水路の傷の深さ

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

芽が出始めたとはいえ、安心はできなかった。


このまま冬を越して、春に本格的に育てるには、どうしても水が要る。雨頼りでは、また同じことの繰り返しだ。水路を、直さなければならない。


俺は、ミリアとウォルトを連れて、崩れた水路の本格調査に出た。


「水源は、ここです」


山の麓まで登ると、小さな流れがあった。地面に手を当てて、水脈をたどる。土壌感知が、地中の水の道筋を教えてくれる。


「水は、ちゃんとある。ただ、村まで届いていないだけです。途中で、水路が二か所、崩れてる」


一つ目の崩壊箇所は、土砂で埋まっていた。これは掘り出せば通る。問題は、二つ目だった。岩盤が露出して、もとの水路の道が完全にふさがれている。


「ここは、もとの道は使えません。岩を避けて、新しい道を掘る必要があります」


ウォルトが、険しい顔をした。


「掘る……魔法もなしに、ですか」


「できます。距離を測れば、計算できる」



調査の途中、休憩をとった。俺は、岩に腰を下ろしたラナに、改めて尋ねた。


「ラナさん。二十年前に何があったのか、もう少し詳しく、教えてもらえますか」


ラナは、しばらく黙っていた。それから、ゆっくりと話し始めた。


「あの年は、特に、雨が少なかった。水路の水を、誰の畑に先に引くかで、農家が揉めた。最初は、口喧嘩だった。だが、収穫がかかってる。みんな、必死だった」


ラナの目が、遠くを見た。


「夜中に、人の畑の水路を、こっそりふさぐ者が出た。ふさがれた方は、仕返しに、また別の場所を壊す。憎み合って、憎み合って……しまいに、誰かが、水路の一番大事なところを、叩き壊した。これでもう、誰も水を引けない、とな」


「……」


「わしの亭主は、まだ若かった。橋の上から、それを見ていたそうだ。大人たちが怒鳴り合って、鍬を振り上げて、自分たちの命綱を、自分たちで壊していくのをな」


ラナは、深く息を吐いた。


「水路が死んで、畑も死んだ。憎み合った者は、村を出ていくか、死ぬかした。残った者は、誰も、あれを直そうとは言わなかった。直すってことは、あの日のことを、また掘り返すってことだったからな。謝ることも、直すことも、できなかった。二十年、ずっと」


ミリアが、息を呑んだ。


「だから……誰も、水路を直そうとしなかったんですね」


俺は、しばらく考えてから、口を開いた。


「分かりました。でも――過去を責める人は、ここにはいません。誰が悪かったかなんて、もう関係ない。今、この土地に水が必要だ。それだけが、今の問題です。だから、一緒に、直しましょう」


ラナが、その言葉を、噛みしめるように繰り返した。


「……今の問題として、か」


「そうです」


ラナは、何も言わなかった。だが、その肩から、少しだけ力が抜けたように見えた。二十年間、彼女が一人で背負ってきた重荷が、ほんの少し、軽くなったのかもしれなかった。



帰り道、ウォルトが静かに聞いた。


「水路、本当に直せますか。岩盤があって、人手も足りない」


「直せます。岩盤には、迂回路を作る。人手は……時間をかければ、集まります」


「時間、ありますか」


「冬の間に直す。それが、間に合う唯一のタイミングです」


雪が積もる前に、掘り始めなければならない。春の水に、間に合わせるために。


俺は、空を見上げた。秋の風が、少しずつ、冷たさを増していた。

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