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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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17/20

第17話 土の色が変わった

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

秋まきから二週間が過ぎた。


朝、区画Bの様子を見に行こうと農地へ向かうと、先客がいた。


ラナだった。


腰をかがめて、堆肥を入れた畑の土を、両手で握っていた。俺がまだ近づく前から、彼女はずっと、そうしていたらしい。


「……色が、違う」


ラナが、呟いた。


俺が来たことには、まだ気づいていない。あるいは、気づいていても、振り返る余裕がなかったのかもしれない。彼女は、ただ土を見つめていた。


俺は、静かに近づいた。「何をしているんですか」とは聞かなかった。彼女が自分で確かめに来たことは、見れば分かる。


「変化してきてます」


俺がそう言うと、ラナはようやく振り返った。


「本当に、違う」彼女の声は、わずかに震えていた。「この土で、こんなに変われるとは。わしは何十年も、ここで畑をやってきたが……こんな色の土は、見たことがない」


堆肥を入れた畑の土は、確かに、色が深くなっていた。前は白っぽく乾いていた土が、今は黒っぽく、しっとりと湿りを帯びている。有機物が分解され、土に溶け込み始めた証拠だった。


ラナは、土を握っては離し、握っては離しを繰り返した。確かめずにはいられない、というように。


「……まだ、信用したわけじゃないぞ」


やがて、彼女はそう言った。


「分かってます」


「でも」


ラナは、土を、そっと畑に戻した。


「……続けてみろ」


俺は、その言葉を、しっかりと受け取った。


二十年間、何も信じなかった老婆が、「続けてみろ」と言った。それは、ただの許可ではなかった。様子見から、応援へ。彼女の中で、何かが確かに動いた瞬間だった。


前世でも、何度も経験した。最初の理解者が、本気で動き出す瞬間。そこから、すべてが変わり始める。


「ありがとうございます」


俺がそう言うと、ラナは照れ隠しのように、ふんと鼻を鳴らした。



そのとき、畑の向こうから、子供の声が響いた。


「芽が出てる! ねえ、芽が出てるよ!」


アナだった。区画Bの一角で、しゃがみ込んで、地面を指差している。


駆け寄ると、確かに、そこにあった。


地面から、ほんの少しだけ顔を出した、緑の芽。


指の先の、さらに半分にも満たないほどの、小さな小さな芽。種まきから十日。予定より少し早い、発芽の兆しだった。


「本当だ」


俺は、しゃがんで、芽をのぞき込んだ。


弱々しい。風が吹けば折れそうなほど、頼りない。だが、それは確かに、地面から上を向いて、空を目指していた。


「ちゃんと育てよ!」


トムが、芽に向かって叫んだ。


俺も、心の中で、同じことを思った。


ラナが、少し離れたところから、その芽を、じっと見ていた。何も言わなかった。だが、その目に浮かんだものを、俺は、見た気がした。

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