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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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15/20

第15話 種を選ぶ

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

麦の秋まきに向けて、種の選別を始めた。


机の上に、麦の種をどさりと広げる。俺とミリア、それに子供たちが囲んで、一粒ずつ選り分けていく。


「太くて、重い種が、いい種です。細くて軽いのは、発芽しにくい。芽が出ても、弱い」


「全部、同じに見えるけど……」


ミリアが種をつまんで、目を凝らす。


「慣れれば、分かるようになります。でも、もっと簡単な方法があるんですよ」


俺は、桶に水を張った。


「これに、種を入れる。浮いた種は、中身が詰まってない。使わない。沈んだ種だけ、使う。水選法といいます」


種を水に放つと、いくつかが、ふわりと浮いた。


「沈んだ種のほうが、使えるの?」トムが首をかしげた。「逆じゃない? 軽いほうが、元気そうなのに」


「逆なんだ。沈むってことは、中身がぎっしり詰まってる証拠。それだけ、芽を出す力がある。浮く種は、中がスカスカで、力が足りない」


「へえ……」


トムは、浮いた種と沈んだ種を、何度も見比べていた。



昼になると、村の老婆たちが食事を運んできてくれた。麦粥に、干した野菜を少し入れたものだ。


質素な食事だった。だが、種を選んだあとに食べると、不思議と味わい深い。


「今はこれしかないけど」


ミリアが、椀を抱えた子供たちに言った。


「来年は、もっといろんなものが食べられるよ。野菜も、豆も。約束する」


子供たちが、目を輝かせた。


種を一粒、大切にする。それが、来年の食卓を変える。痩せた食事を前にしながら、俺は静かにそう思った。土と食べ物は、まっすぐにつながっている。


アナは、選んだ種を一粒ずつ手に取って、何やら呟いていた。


「これは、太郎。これは、次郎……」


「アナ、それは……?」


「名前。つけてるの」


ウォルトが、困ったように俺を見た。


「全部の種に、名前を……? いったい何百粒あるのか……」


「いいんですよ」俺は笑った。「大切に育てようとしてる。気持ちがあれば、種はちゃんと応える。それでいいんです」


アナは、真剣な顔で、種に名前をつけ続けた。



夕方、明日からの段取りを確認した。


「明日から、秋まきを始めます。まずは区画B――堆肥を入れて、土を戻した畑から。一番、芽が出やすいはずです」


「楽しみ」


ミリアが、ぽつりと言った。それから、自分でも驚いたように、口元に手を当てた。


「……楽しみ、なんて。久しぶりに思いました。私」


その言葉が、何より嬉しかった。諦めの底にいた人が、また「楽しみ」と思えるようになる。それは、芽が出るのと同じくらい、大事な変化だった。



種の選別が終わった夜。子供たちはもう寝てしまい、ミリアだけが、まだ机に残っていた。


「本当に、来年は、違うと思いますか」


「思います」


俺は、はっきりと答えた。


「……そうですか」


ミリアは、選んだ種の入った袋を、両手で大事そうに抱えて帰っていった。


その後ろ姿を見ながら、俺は思った。あの袋の中には、種だけじゃない。この村の、来年への希望が、詰まっている。

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