第13話 輪作計画と村長の壁
本作は全70話で完結予定です。
毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。
続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
ミリアと二人で、輪作の計画書を仕上げた。
三年で畑を一巡させる計画だ。どの区画に何を植え、どこを休ませるか。堆肥をいつ入れ、収穫はどれくらいを見込むか。ミリアが覚えたての字で、必死に書き込んだ。
それを持って、村長の屋敷へ向かった。
「区画を、休ませる?」
計画を聞いた村長は、案の定、声を荒げた。
「休ませるなんて、もったいない! 一粒でも多く植えなきゃ、今年の冬が越せんのだぞ! 畑を遊ばせる余裕が、どこにある!」
当然の反応だった。明日の食料も危ういのに、二年後の話をされても、響くわけがない。
俺は囲炉裏の前に膝をついて、村長と目を合わせた。
「村長さん。一つ、聞かせてください。今のままの区画Aと、堆肥を入れて土を戻した区画Aでは――どちらが、多く収穫できると思いますか」
「そりゃ……戻した方だろうが」
「今の区画Aの収穫を、仮に十とします。手を入れて輪作すれば、二年後には十五から十八は穫れる。休ませるのは、損じゃないんです。投資です。今、少し我慢して、後で大きく返ってくる」
「……投資、だと」
「ただ」俺は続けた。「村長さんが心配しているのは、今年の冬のことですよね。二年後より、今年食えるかどうか」
村長が、はっとした顔をした。図星だったのだろう。
「今年の冬の食料は、確保します。全部の畑を一度に変えるわけじゃない。改善した区画と、今まで通りの区画を、両方使う。新しいやり方を試すのは、区画BとDだけです。残りは、今まで通り。だから、今年穫れる分は、減りません」
村長は、長いこと黙っていた。
すべてを変える、と言われたら、彼は拒んだだろう。だが、半分だけ試す、今までの分は守る、と言われると、断る理由がなくなる。
そばに立っていたミリアが、口を開いた。
「村長。私も、やると思います。この人の言うこと、理屈が通ってる。試すだけなら、損はないでしょ」
村の若い農業者であるミリアが言ったことは、大きかった。
村長は、深いため息をついた。
「……やってみろ。だが、今年の冬に食料が足りなくなったら、俺は迷わず廃村を進める。それでいいな」
「結構です」
俺は頭を下げた。条件つきとはいえ、これで区画BとDで、正式に改革を始められる。
◇
帰り道、ウォルトが言った。
「村長は、まだ信じていないようでしたね」
「信じていなくて、いいんです。今は」
「いいんですか」
「言葉で信じさせようとしても、無理です。人が本当に変わるのは、芽が出た瞬間です。緑が、土から顔を出したとき。それを見るまで、信じられないのは当たり前なんです」
だから、それまで続けるだけだ。
芽が出るまで。緑が、誰の目にもはっきり見えるまで。
俺は、空を見た。秋の空が、高く澄んでいた。種を蒔くには、ちょうどいい季節だった。




