表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/21

第12話 なぜを教える

本作は全70話で完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10/12:10/18:10/20:10/22:10 に予約投稿しています。

続きが気になりましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

堆肥が熟成するまでには、時間がかかる。


その待ち時間を、俺は無駄にしたくなかった。ミリアも同じだったらしい。ある日、彼女のほうから切り出してきた。


「なんで連作がダメなのか、もっと詳しく教えてください。ちゃんと理由を知りたい」


いい兆候だった。理由を知りたがる人間は、必ず伸びる。


「いいですよ。じゃあ、質問から。同じ作物を、同じ畑に植え続けると、何が起きると思いますか」


「土が……疲れる?」


「そうです。なぜ疲れると思いますか」


ミリアが考え込む。俺は急かさなかった。考える時間こそが、知識を根づかせる。


「作物が、土の栄養を吸うから……同じ栄養ばっかり、なくなる?」


「正解です。麦が欲しがる栄養は決まってる。麦ばかり植えれば、その栄養だけが、どんどん減る。残った栄養はあっても、麦には使えない。だから育たなくなる」


「……じゃあ、どうすれば戻るんですか」


「違う作物を、順番に植えるんです。これを輪作といいます。特にいいのが、豆です」


「豆?」


「豆は、土に栄養を足してくれる。空気の中にある栄養を、根っこに取り込んで、土に置いていってくれるんです。だから、麦を植えた畑に、次は豆を植える。その次はまた違うものを。そうやって回せば、土は痩せない」


ミリアの目が、見開かれた。


「豆を植えると、土が良くなる……? そんなの、聞いたことない」


「この村では、誰も知らなかっただけです。珍しい話じゃない。知っていれば、当たり前のことです」


ミリアは、しばらく黙っていた。それから、絞り出すように言った。


「……じゃあ、今まで不作だったのは。やり方が、間違ってたからで……土が、ダメだったわけじゃないんですか」


「そうです」


俺がそう答えた瞬間、ミリアの表情が、ぐしゃりと歪んだ。


悔しさと、希望と。両方が混ざった顔だった。両親が苦しんだのも、村が痩せていったのも、土のせいではなかった。やり方を、誰も知らなかっただけだった。


「……この土、まだ助けられるんだ」


ミリアは、そう呟いた。涙ぐんでいた。だが、それは絶望の涙ではなかった。


「教えてください」


彼女は、まっすぐに俺を見た。


「ちゃんと理解してから、動きたい。なんとなくじゃなくて、自分で分かって、やりたい」


「分かりました。一緒に考えましょう」


弟子、という言葉は使わなかった。それは、上から教える関係になってしまう。一緒に考える。それで、いい。


そばで聞いていたウォルトが、ぽつりと言った。


「俺にも、なんだか分かってきた気がします。豆が、土に栄養を……」


「そうです。ウォルトさんも、立派な農業の生徒です」


「いえ、私は騎士なので」


ウォルトは慌てて否定したが、満更でもない顔をしていた。



その夜、ミリアは一人で、何かを計算していた。


「どの区画に豆を植えて、どの区画を休ませて……三年で回すなら、最初の年は――」


地面に小枝で図を描き、ぶつぶつと呟いている。


俺は、余計なことは言わなかった。


自分で考え始めた人間に、横から口を出すのは、一番やってはいけないことだ。それも、二十二年で学んだことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ