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第6話 世にも不思議なアイスクリーム

                -Selcuk

 途中、高速道路も使いながら快適なバスの旅を1時間半。セルチュクのオトガルは珍しく街の中心部にあった。ここでタクシーに乗り換え、泊まる予定のホテルへ。いったん荷物を置くと、今度はミニバスで再びオトガルに戻る。ここからは徒歩で。日本を発って三日目の午後、ようやく本格的な観光の始まりだ。


 まず手始めに考古学博物館に行く。こぢんまりとした建物だが、近くにあるエフェス都市遺跡から出土したギリシャ・ローマ時代の彫刻が数多く展示されていて、なかなか見ごたえがある。どれもこれも世界史の教科書に載っていそうな作品ばかりなのだ。


「あれ、もうこんな時間だ。どうしよう、このペースじゃ、エフェスまで回れないよ」

「一緒に入ってきた欧米人のグループは、とっくの昔に出て行っちゃったよ」


 いつものことだが、博物館に来るとつい長居をしてしまう。グループ行動なら集合時間があるが、フリーで来ているだけに歯止めが利かない。しかし、ここはまだ前座だ。この辺で切り上げておかなくては、あとあと後悔する。


 博物館を出ると、再び強い陽射しが頭上から降り注いできた。地図によればここから遺跡までは約30分の道のり。暑いことは暑いが、湿度が低いのでカラリと爽快な感じがする。さすが地中海性気候。大昔から暮らしやすい環境だったのだろう。


「さあみんな。頑張って歩くぞ」


 そう言って振り返ると、どうしたことだ、妻も弟も見当たらないではないか。


「こっちこっち」

「遊園地があるのよ」


 声のする方に寄って行ってみると、本当だ、博物館の隣の柵で仕切られた敷地で観覧車やメリーゴーラウンドが回っている。遊具自体は素朴なものだが、外国の遊園地なんて初めて見るだけに興味深い。


「それはそうと、手に持ってるそれは何」

「ああ、これは、ちょっと暑かったので」

「食べますか」


 弟がカップを差し出す。アイスクリームだ。いつの間に買ったのだ。というか、なぜ自分たちの分だけ買っているのだ。この旅行の参加者は3人のはずではないか。


「甘いものは嫌いかと思って」

「これ、面白いんですよ。かき混ぜるとビヨーンて延びるんです」


 ばつの悪さを取り繕いがてら弟が実演してくれた。多少力は要るが、ぐるぐるかき混ぜた後にスプーンを持ち上げるとあら不思議、アイスがゴムのようについてくる。


「日本のアイスもこんなだったっけ」

「いや、違うでしょう」


 食感も違う。味は確かにバニラアイスのそれだが、舌触りはやや固め。噛んでみると少しガムっぽい弾力がある。飲み込む時にもなかなか溶けていかない。


「トルコ名物らしいよ。ガイドブックに載ってた」


 かき混ぜればかき混ぜるほど粘り気が増し、長く延ばせるようになる。僕と弟は競うようにカップをかき回し始めた。もはや食べるのは二の次だ。これではますます遺跡が後回しになると思ったが、あまりの面白さにもう止められなかった。

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