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46 対策会議【3】

 空になった食器が下げられ、テーブルにはデザートが置かれていく。

 私は季節のフルーツパンケーキ。ヨシさんは抹茶白玉ミニパフェ。桔梗さんはカフェインレスコーヒー。


「儀式のこともだけど、野蕗ちゃんのことも、もっと知りたいかも」


 パンケーキを切り分けている間、桔梗さんは過去の記憶をぽつりぽつりと話してくれた。


「授業でグループになったときに喋ったりするくらいの、友達の友達……みたいなクラスメイトでした。いつの間にか周りから『おばけ』って呼ばれるようになっていて」


 おばけというあだ名の理由は、野蕗に霊感があったからだそうだ。


「霊感少女……」


「そうです。野蕗ちゃんは目立たない子供でした。でも、優しくて、勇気があったから、危険な霊に関わろうとする子がいたら忠告するし、霊障がおきている子には触れて祓ってあげていました。あの子は子供のころから《本物》だったんです。……でも、みんなは、目立とうとした野蕗ちゃんの虚言だと思ったんです。だから、目をつけられていじめられた」


 冷やかされても野蕗ちゃんは意見を変えなかったようだ。その結果として救われたクラスメイトも多かったが、そのことに誰も気付いていなかった。


 なお、野蕗の両親は娘の死後も地元で生活を続け、数年後に病死したらしい。心労による負荷もあっただろうが、年齢的にそう不自然ではない最期だったそうだ。


「私は……傍観していました。自分にも霊感がありましたから、野蕗ちゃんが嘘をついていないことはわかっていました。でも、他人にない力を見せびらかしたらどうなるかくらい少し考えたらわかるはずなのに、と……彼女を自分の失敗ルートだと冷めた目で……」


「あ、そういうのいいから。桔梗さん、霊能力なんてないでしょ」


「えっ」


「あっ」


 ヨシさんが「言わんでいいことをなぜ……」とばかりに目頭を押さえてうつむいている。


 情報を曖昧にしたっていい事なんかないじゃん。命がかかってるわけだし、何が役に立つかわからない。

 桔梗さんについては気になることばっかりだ。塩の浄化トリックの種明かしも聞きたいし。


「野蕗ちゃんにすごく同情してるように見えるけど、妹を祟り殺した相手でしょ? どうしてそんな寛容な態度でいられ──」


 話の途中で集中力が途切れる。なんか……桔梗さんの肩越し、ガラス張りの向こうに見える路上の様子がおかしい。

 あの車、車線を無視してまっすぐこっちに向かってきてないか?

 運転席の人、ハンドルに突っ伏してて前を見てない。


「やばいってアレ!!」


 とっさにそう叫び、テーブルの上へ身を乗り出す。背中側の出来事に気付いていない桔梗さんの腕をつかんでボックス席の外へ引っ張り出した。

 隣のヨシさんもすぐに事態を察知して転がり出る。


 直後、ガラスや壁を破壊して車が店内へ突っ込んできた。


 私たちが囲んでいたテーブルがひしゃげて愉快な形状になり、そこにあったデザートたちは無惨に散っていく。


 騒然とする店内に、平和なBGMが同じ調子で流れ続けていた。


 桔梗さんの上に被さっていた私は起き上がり、車を見やる。

 運転席に座っている人は変わらず気を失っているようだった。


「救急車!」

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