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45 対策会議【2】

「これは……厄除けですね。あの村は厄除け祈願の風習が根強いんです。──父もそれに則った方法で野蕗ちゃんを除けようとしたんだと思います」


「桔梗さんは、お父さんがどういう作戦を立ててたのかわかるんだ?」


「おそらくですが……」


 話を聞くと、ごがん村には代々受け継がれる祭儀──宗教的儀式が転じた神事芸能──があり、それがまさに《邪悪な神霊を憑代(よりしろ)が肉体に引き受け、共に天へ帰る》内容らしい。


 桔梗さんは、あの家に飛び込んで父親の状態を見たとき儀式を試みたことを察したという。


 桔梗さん自身、野蕗と対話できるんじゃないかと何度かあの家に訪れており、除霊を試みるならそこでだと考えていたそうだ。

 ゆかりがあるごがん村の儀式が野蕗ちゃんの除霊に有効かどうか調べている途中でもあったらしい。


 それを父親に話したことはなかったが、薄々伝わっていたようだ。

 父親は、娘の妊娠がわかった途端に不吉な出来事が──野蕗ちゃんの悪意を感じることが──増え、もとより祟りの噂を意識していたためピリピリしていたらしい。そんな矢先、病気による余命宣告を受けた。残り少ない命の使い道を考えた結果、桔梗さんがやろうとしていたことを、()いで先にやってしまった……。


「こんなこと望んでない。誰よりも孫に会うのを楽しみにしていたくせに」


 フォークを握ったままうつむく桔梗さんは悔しそうだった。

 それもそうだろう。怯える友人や家族を守るために霊能力者のふりをすることを選んだ女だ。

 闇に堕ちた子供を哀れむほど人が良いくせに、なぜ秘諸姫様と名乗り浄化の力があるなどと嘘を吐いているのか不思議だったが、蓋を開けてみればなんてことはない。人が良いからこそ。

 彼女はいま、敗北を噛み締めている。


「儀式が不完全だったのか、野蕗ちゃんは今も無事……。こんな無駄死に、そりゃ悲しいよ──ア痛ァッ!!!!」


 ヨシさんに後頭部をブッ叩かれる。なんで。悲しみに寄り添おうとしたんじゃん。


 桔梗さんが俯いたまま黙ってしまった。もしかしてまた言い方が悪かったの?

 でもさあ、なんで私ばっかり怒られるんだろ。


「とにかく、あとは私たちに任せてよ。桔梗さんじゃ荷が──お腹が重いでしょ」


 野蕗ちゃんがまだ消えてないことは、私にとっては朗報だ。

 怨霊になった彼女の恐ろしさを堪能することが目的だから、霊にとっての脅威どころかエサたりえるとわかった桔梗さんと手を組むのも好都合。堪能した後なら除霊だろうがなんだろうが手伝ってもいい。

 桔梗さんやお腹の子にもしものことがあったら、私の切り札であるヨシさんが病んでしまうしな。


「危険です。あの家であなたの身体に起きたことを忘れたんですか?」


 ちゃんと覚えてる。不衛生な得体の知れない水を吐きまくったからかあの後しっかり下痢した。なんなら、喉が腫れて熱も出た。


「巻き込むわけにはいきません。今からでもきっと、関わらないようにすればあの子も興味を失いますから……」


 この人は、都合の良い味方が現れても利用しようと思わないんだなぁ。損な性格をしている。


「心配はいらないよ。私は怖い思いをするために生きてるとこあるし、ヨシさんも大体同じようなもんだから」


 隣でハンバーグを静かに食べていたヨシさんが、紙ナプキンで口元を拭きながらやっと声を発した。


「……心里さん、まさかとは思いますけど」


 喋ってばっかりで食事が進んでなかったな。私もとろとろの卵で包まれたチキンライスを大きく口に頬張り、もぐもぐしたまま喋る。


「うん。桔梗パパがやろうとした儀式、私がもっとうまく再現してみたいな」


 失敗しても面白そうだし、私ならたぶん死なない。


 そのためには、勉強しなきゃね。ごがん村の儀式のこと。

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