44 対策会議【1】
オカルトスポット《呪われた家》から脱出し、遠回りして車へ戻った。
停車位置が家から近すぎるため、離れた場所に車を停めなおしてから野次馬のフリをして現場に戻る。
「桔梗さん、大丈夫でしょうか……」
「お腹の子を守るっていう目的があるうちは気丈でいられるでしょ」
現場には、救急車だけでなく警察車両も停まっていた。やはり死亡と判断されて救急隊員から警察に連絡が行ったようだ。
「ん?」
緊急車両のライトで照らされた玄関先に違和感がある。目を凝らしてよく見ると、私たちが侵入したときと違う点がひとつあった。
「どうかしたんですか?」
不思議がるヨシさんにもわかるように、そこを指差す。
「……私たちが来たとき、玄関の盛り塩って白っぽかったよね?」
そこには、真っ黒に濁った盛り塩がある。まるで禍々しい気配に当てられて腐ったかのよう。
私をまっすぐに見つめてくる人外の瞳を思い出し、背筋がゾクゾクと震えた。
化け物と真っ向から関わった実感がわき、思わず口元が緩む。
■ ■ ■
桔梗さんとの再会はわりとすぐだった。
「いやー、あの時は助かったよ。一度でも警察に関わって指紋を採取されると後がやりづらくなるから」
「心里さんは犯罪をされるご予定が……?」
「無い、無いですよ。ねっ、心里さん」
「未来のことはわかんないからなぁ」
四人がけのテーブル席で、私とヨシさんが横並びに座り、向かいのソファに桔梗さんが座っている。
ヨシさん経由で連絡をとり、ファミレスでランチと洒落込んでいるのだ。
雑談に付き合ってくれてはいるが、桔梗さんはさすがに元気がない様子だった。実父を亡くした直後なのだから仕方がない。
空元気を続けさせても酷だと思い、注文した料理がテーブルに並んだあたりで本題を切り出す。
「私たちはオカルトスポット巡りだったけど、桔梗さんはどうしてあそこに?」
桔梗さんはテーブルに置いたスマホを撫でる。呪われた家で大穴に呑まれたように見えたが、穴が消失した後はしれっと床に落ちていて回収できたらしい。
「父から『何も心配しなくていい』という内容のメッセージが来ていて、普段そんな話をする人ではないから……何かするつもりなんじゃないかと探していたんです。ちょうど先日、あの家のことを聞かれたのでまさかと思ったら……」
「あそこが野蕗ちゃんをいじめた子の家なのは間違いないんだ?」
「はい。いじることがあるなぁとは感じていましたが……あの家の子と野蕗ちゃん、最初は仲が良かったんですよ。何人かのクラスメイトを集めてあの家の在所──おばあちゃんの家にお泊まりしたり。共通の友人に声をかけられて、私も行きました」
「おばあちゃんの家って、もしかしてごがん村にある?」
「あら、どうやってそれを?」
「あの家に写真が飾ってあって、簡単に調べたの」
オムライスを口に運びながら答える。あ、おいしい。
ヨシさんは日替わりワンプレートのおろしハンバーグで頬を膨らまし、桔梗さんはアラビアータをフォークでつついている。
「そうでしたか。偶然ですが、私の父方の実家でもあるんですよ」
「そうしたらさ……」
額縁の裏にあった護符を撮っておいて良かった。写真を見せる。




