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40 呪われた家【2】

 いじめられっ子の野蕗ちゃん。彼女が亡くなった事故が元で学校に怪談が生まれた。

 そして彼女の祟りを恐れて転校したり、卒業にあたって引っ越したクラスメイトが、怪談拡散に一役買った。

 学校が廃校になり、オリジナルの怪談はほぼ断絶したが、拡散先では形を変えて語り継がれている。


「桔梗さんと情報をすり合わせた感じだと、そう考えられますね」


「ふーん。私も会ってみたいな、秘諸姫様」


 いじめっ子に限らず、傍観したクラスメイトも祟りの標的になっているそうだ。

 秘諸姫様もとい垂川桔梗は、彼女の元クラスメイトで、例に漏れず狙われている。過去に妹を()()()()()()、今は腹にいる子供が同じ末路にならないよう対策を練っている、と。


「共通の敵というわけですし、僕たち協力できるかもしれませんよ」


「まだダメ。秘諸姫様がホンモノの霊能力者で《ひろきくん》もとい野蕗ちゃんを鎮めちゃう可能性があるならまだ出てきてほしくない」


 祟りを回避して自分や家族を守って生き延びたい──という目的は共通しているが、過程の考え方が違う。

 彼女は野蕗ちゃんも標的も救いたいようだが、私は野蕗ちゃんという怨霊が存分に暴れ回るところを生で見てから後のことを考えたい。穏便に成仏されたら困るのだ。


「そう言うと思いました」


 ヨシさんの長いため息も聞き慣れてきた。

 しかして、彼は彼でTRPGで言うところの秘匿持ちだし、人狼で言うところの第三陣営である。

 私のワガママに振り回されている感を出しているが、ちゃっかり自分の目的を果たそうとうまく立ち回っている。


「桔梗さんが野蕗ちゃんを祓えたら、ヨシさんには都合がいいもんね」


「それはそうなんですが、今回その期待はしてません。桔梗さんが本物の霊能力者ではなく慈善家のペテン師だから、野蕗ちゃんに殺されるのを心配しているんです」


 ああ、そっちだったか。

 ていうかヨシさんはもう確信してるんだね。桔梗さんがホンモノじゃないって。

 ま、そりゃそうか。確信するだけのヒントがもう充分にある。


 それにしたって、ヨシさんはおめでたいお人好しだなぁ。


「ヨシさんが守ってあげればいいじゃん」


「わかってるくせに。僕にそんな力はないんです」


 彼お手製のさるぼぼ守りが発動したのも、受け取ったのが私だからだ。同じものを桔梗さんにあげても何も起きない。


「はいはい。私や桔梗さんが助かるためにも、あの子の攻略法をいち早く見つけないとね。口裂け女のポマードしかり、カッパの皿を叩き割ることしかり、野蕗ちゃんにも弱点はあるだろうから」


 トイレや脱衣所、仏壇のある畳部屋や二階の子供部屋、一部屋ずつチェックしていく。


 暗闇の廃墟は薄寒く不気味で、ホラーの雰囲気満点だ。怖がりなら充分に楽しめるだろう。

 私には物足りない。あくびが出た。


「恨みが晴れないから、野蕗ちゃんは成仏できないんでしょうか」


 荒らされ、カビだらけの子供部屋を出て階段を降りながらヨシさんが言った。


「跡地に住んだ人間も祟るくらい頭に来てるみたいだしねぇ。親が供養してそうなもんだけど、それでも成仏できないってんなら相当だよ」


 回廊作りの家はほんのり迷路じみている。寝室らしき部屋の先に進むとまた居間に出た。


 暗くて気付かなかったが、居間の奥にさらに部屋があるようだ。じゃらじゃらとしたビーズカーテンが向こう側の空間との仕切りになっている。

 そこへ歩く途中、壁の額縁に気付いた。ガラス面が割れているが、中の写真は無事だ。

 家族写真が入っているようで、侵入者たちもさすがに触るのは遠慮したのかもしれない。

 並ぶ男女と子供。その背景には広い空と独特な家屋が立ち並んでいた。ど田舎の村っぽい。旅行先か、はたまた彼らの故郷だろうか。

 スマホを向け、写真の写真を撮った。類似画像検索にかける。


「……ごがん村?」


 全然知らない村だ。

 なんとなく額縁を手に取り、ひっくり返して見た。

 すると、裏側には見たことない護符が貼られていた。それも撮って画像検索するがヒットしない。ごがん村のマイナーな護符とかかも。なんて書いてあるかぜんぜんわからん。


「ヨシさん、これ読める?」


 呼ぶと、隣に立って手元を覗きこんできた。彼はしばらく考えた後に私を見る。


「読めないですね」


「だよね」


 家内安全か、魔除けか、それすらもわからない。牛みたいな顔の鬼の絵が書いてあることだけはわかる。


 額縁を壁に戻し、ビーズカーテンに手を差し込んで潜る。

 しゃらしゃらと軽やかな音が鳴った。



 そこは、キッチンだった。

 電気も水道も止まって長いらしく、からからに乾いたシンクにゴミが溜まっている。

 電源の切れた冷蔵庫も開いたまま、ミイラ化した中身が床にこぼれていた。


「わあ」


 私は()頓狂(とんきょう)な声をあげる。キッチンのあちこちに目を泳がせながら、一点をライトで照らし続けていた。

 そこにあるものを直視すると、面倒なことになるぞと脳みそが警告している。どうしよう。

 こういうとき、どう言うリアクションするのが正しいんだっけ?


「置いてかないでくださいよ、心里さ……ウワッ!? わあぁぁっ!?」


 後を追ってきたヨシさんが腰を抜かしていた。正解はこれか。

 今更同じリアクションをしても仕方がないので、諦めてそれを見やる。


「死体だ。フレッシュなやつ」


 首吊り死体があった。

 梁に縄をかけ、微動だにせずぶら下がっている。

 ダイニングチェアが一脚、足元に倒れていた。

 靴と、遺書もある。

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