表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/66

23 ゆるあわたち【1】

 シャワーを浴びてすっきりした。ヨシさんも使えるようにダブルで部屋をとったのに、車から離れられないと遠慮された。真面目な男である。

 遅い夕飯の買い出しをしてヨシさんの車に戻ると、電話中のようだった。仕事の話っぽいトーンだ。


 助手席のドアを開け、足元に荷物を置いて座る。

 後部座席を振り返って見ると、私が濡らした箇所にはバスタオルが敷かれていた。既にヨシさんが拭いてくれたらしい。


「──よろしくお願いします。失礼します」


 通話を終了したヨシさんは、私を見るなり首を横に振った。残念そうな仕草はつまり、面白い話は何もないということ。


「アパート、変化なし?」


「はい……。退屈で、なぞなぞ10個くらい作ってしまいました」


「なんで?」


 私はときどき、ヨシさんがわからない。


「私も戻ったことだし、仮眠する? 何か食べる? どっちにしても、ここからの監視は任せて」


「その前に、何があったのか教えてくれますね?」


 そうだった。用水路に落ちた詳細、まだ話してないんだった。


「まずはこれ、はい」


 小脇に抱えていた新品のミニクッションを渡した。さっき、コンビニの一番くじで当ててきた謎のファンシーキャラクターのやつだ。仮眠の枕代わりにしていただきたい。


「え、ありがとうございます。僕が『ゆるあわ』好きなの知ってたんですか?」


 この謎キャラ、ゆるあわって言うんだ。


「何の略なの?」


「かくも許されざる哀れなもの」


 こんなに可愛いキャラにどんな業を背負わせてんだよ。


 コンビニの袋も渡すと、ヨシさんは豚カルビ弁当に鮭おにぎりとからあげ、シュークリーム、お茶を選んでいた。

 私はツナマヨおにぎりとサラダチキン、ミルクティー。

 他にもおやつやエナドリ、アイマスクなど一通り買ってある。


 腹を満たしながら、盛り塩の遺棄現場である公衆トイレを見てきたこと、犬の散歩をする女の子を追いかけて用水路に落ちたこと、見知らぬ女に助けられたことを話した。


「幽霊に誘い出されて、水中に引きずり込まれたってことですか?」


「体験したままを言えば、そうなる。アパートの盛り塩をポッケに入れてたから引き寄せたんだと思う。やっぱり何かあるよ」


 望遠鏡でアパートのほうを見る。

 夜の闇は深く、街灯やアパートの照明で照らされている範囲しか見えない。異常なし。


 しかし、あれは本当にアパートの怪異なのだろうか。

 あのワンピース……既視感の理由がやっと分かった。団地で会った子と同じなのだ。

 ひろちゃんと呼ばれていたあの子。

 妙に記憶があやふやで思い出せないが、顔も似ている気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ