23 ゆるあわたち【1】
シャワーを浴びてすっきりした。ヨシさんも使えるようにダブルで部屋をとったのに、車から離れられないと遠慮された。真面目な男である。
遅い夕飯の買い出しをしてヨシさんの車に戻ると、電話中のようだった。仕事の話っぽいトーンだ。
助手席のドアを開け、足元に荷物を置いて座る。
後部座席を振り返って見ると、私が濡らした箇所にはバスタオルが敷かれていた。既にヨシさんが拭いてくれたらしい。
「──よろしくお願いします。失礼します」
通話を終了したヨシさんは、私を見るなり首を横に振った。残念そうな仕草はつまり、面白い話は何もないということ。
「アパート、変化なし?」
「はい……。退屈で、なぞなぞ10個くらい作ってしまいました」
「なんで?」
私はときどき、ヨシさんがわからない。
「私も戻ったことだし、仮眠する? 何か食べる? どっちにしても、ここからの監視は任せて」
「その前に、何があったのか教えてくれますね?」
そうだった。用水路に落ちた詳細、まだ話してないんだった。
「まずはこれ、はい」
小脇に抱えていた新品のミニクッションを渡した。さっき、コンビニの一番くじで当ててきた謎のファンシーキャラクターのやつだ。仮眠の枕代わりにしていただきたい。
「え、ありがとうございます。僕が『ゆるあわ』好きなの知ってたんですか?」
この謎キャラ、ゆるあわって言うんだ。
「何の略なの?」
「かくも許されざる哀れなもの」
こんなに可愛いキャラにどんな業を背負わせてんだよ。
コンビニの袋も渡すと、ヨシさんは豚カルビ弁当に鮭おにぎりとからあげ、シュークリーム、お茶を選んでいた。
私はツナマヨおにぎりとサラダチキン、ミルクティー。
他にもおやつやエナドリ、アイマスクなど一通り買ってある。
腹を満たしながら、盛り塩の遺棄現場である公衆トイレを見てきたこと、犬の散歩をする女の子を追いかけて用水路に落ちたこと、見知らぬ女に助けられたことを話した。
「幽霊に誘い出されて、水中に引きずり込まれたってことですか?」
「体験したままを言えば、そうなる。アパートの盛り塩をポッケに入れてたから引き寄せたんだと思う。やっぱり何かあるよ」
望遠鏡でアパートのほうを見る。
夜の闇は深く、街灯やアパートの照明で照らされている範囲しか見えない。異常なし。
しかし、あれは本当にアパートの怪異なのだろうか。
あのワンピース……既視感の理由がやっと分かった。団地で会った子と同じなのだ。
ひろちゃんと呼ばれていたあの子。
妙に記憶があやふやで思い出せないが、顔も似ている気がする。




