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21 しおしおのおしり【2】

「あれっ、いない」


 犬と女の子を追いかけて道を曲がったが、見失ってしまった。

 無事に帰れているといいが──そう考えた矢先、大きな水音と犬の悲鳴が聞こえた。

 慌てて音のほうへと走れば、さっきの女の子を見つけた。道脇の用水路を覗き込んで叫んでいる。視線の先には、水に落ちた犬。


 用水路の幅は大人一人か脚を開けるくらい。水面は暗くて深さがわからなかった。

 ばたつく犬を見るに、足が底についていないように見える。壁が高いこともあって這い上がれないようだ。


「レオ~! レオぉ~!」


 泣きじゃくる女の子がしゃがんで犬に手を伸ばしている。彼女まで落っこちそうだ。


「お姉さんが行くから、キミは離れてて!」


 暴れる犬を引っ張り上げる自信がない。覚悟を決めて用水路の中へ飛び降りた。──ざぶん。腰まで一気に浸かり、水の冷たさに肌がゾワッと鳥肌立つ。


「さあ犬っころ、抱き上げるから自分で登れよ!」


 暴れるモフモフを抱きしめ、うんしょと押し上げた。重ッ。


 クゥンと鳴きながら犬はどうにかよじ登っていく。姿が見えなくなり、地上で濡れた身体をブルブル震わせる音が聞こえる。もう大丈夫そうだ。


「よかよか。さて……私も上がるか」


 手を伸ばせば、どうにか壁の上縁に指がかかる。

 こういうのは勢いが大事。いくぞ。

 

「んっ?」


 なんだか腰のあたりが重い。ジャンプできない。


 あれっ、水の流れって、こんなに早かったっけ?


 足元ぬるぬるしてふんばれないかも……あっ、あっ、なんかこれ。


「あぶ……っ」


 ずるん、と足を急流に持っていかれた。水中へ倒れ込む。


 ばちゃあぁんっ!


 全身が刺すような冷たさに包まれる。

 立ち上がればいいだけの話なのに、それができなかった。地面の方向はわかる。だから足を伸ばすけど、靴底が滑って立てない。

 顔だけでも水面に出したい。底を蹴って浮上しようとするのに、腰に何かが絡みついてきて水中に留められてしまう。

 息ができない。この水おいしくない。


(がばべべべ! むぉ゛おお!)


 バチャクソに溺れててウケる。手足をばたつかせてもがく中で、頭は冷静だった。


(むぐぅ!?)


 水中へさらに引きずり込まれていく。えっ、こんなに深かったっけ?


 そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 ばしゃん。背後に水音が聞こえた。

 誰かが私を抱き留め、ぐんと上へと引き上げてくれる。助けが来てくれたらしい。


 水面に浮き上がった瞬間、空気のおいしさを思い切り味わう。

 腰にしがみつく女の子は消えていた。


「なにしてんの、あんたッ!」


 激しく咳き込む私の頭を、助けてくれた女の人は容赦なくチョップした。痛い。


「けっして遊んでいたわけでは……」


「わかってるわよそんなの! ズボンのポケットに入れてるものいますぐ出しな!」

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