15 真偽のほどは【1】
ハッと目を覚ます。
私は寝袋の中でスマホを握りしめて眠っていたようだった。
カーテンの向こう側は明るく、すっかり朝だ。
「……夢?」
起き上がって身体に異常がないか確かめたが、寝汗がすごいだけでなんともなかった。
昨夜は目玉だらけの不気味な影と対峙していたはず。その後の記憶がない。
あれが現実だったとして、無事に朝を迎えた理由がわからない。いくら私の運が良くても、何事もなさすぎる。
まさかそんな。
寝落ち夢オチ?
「そんな展開、神が許してもオカルトマニアが許すかよ」
悔しさで暴れ回ろうとした矢先、スマホから水戸黄門のテーマ曲が流れ出した。ヨシさん専用の着信音である。
通話に出る。
「もしもしー?」
『心里さん、僕です。夕方くらいに迎えに行けばいいですよね?』
「うん、降ろしてくれた駅で。よろしくお願いします!」
『ではまた後ほど。変なことがあったらすぐ連絡してくださいよ』
「あーっは、へへへ。会ったときにまた話すよ」
『え? 何かあったってことですか? ちょっと、心里さ──』
あー。親指が悪さをして通話を切ってしまったー。
通話を切ってすぐ、スマホのアラームが鳴った。スケジュールの通知だ。出発の30分前。
「もうこんな時間!? 早く行かなきゃバス乗り損ねるっ」
爆速で身支度と片付けをして部屋を飛び出た。
共用廊下に出ると、しゃがんでいる男児たちを蹴り飛ばしそうになって驚く。
「おわぁっ!?」
よく見ると、扉の横に盛り塩を置いているところだった。
「こりゃガキども、他人の家に勝手に塩を置くんじゃないよ」
「置いとかないと危ないよ。知らないの?」
ああ、盛り塩が当たり前になっているここの子供からすれば、それはイタズラではなく善意なのか。
なんて声をかけるのが正解かわからず、「そっか」とだけ答えて立ち去った。
あの様子だと、初日の塩もあの子たちが置いたんだろうなぁ。
■
バスにはなんとか間に合い、駅でサトウさんと合流した。
借りていた鍵を返し、お礼を伝える。
「どうでした? 何かありました?」
不安そうな姿を見ていると、夢の内容を伝えてさらに怖がらせるのも酷な気がした。
「普通に寝て起きてなんもなかったよ。──ところでさ、付き合ってほしいところがあるんだけど、保険証もってる?」
キョトンとするサトウさんとタクシー乗り場に行き、颯爽と乗り込む。
ネットで調べておいた場所を運転手に伝えた。




