14 秘諸姫様にまつわる話
* 清めの巫女《秘諸姫様》についての記事:
その界隈で秘諸姫様を知らない人はいない。四年前、『ネイルサロン咲小町』でネイリストとして活躍する彼女は自分に飛び抜けた魔除けの力があることに気付いた。以降、霊能者の秘諸姫様となって人々の"悩み"を浄化している。
ゆったりとしたプライベートサロンで指先を美しくケアされながら、悩みを打ち明ける。それだけでも疲れた現代人には大きな癒しだろう。
その先で彼女は客が抱える邪気や呪いを浄化してくれる。
邪気というのは、生活する中で肉体が吸収してしまう日常の穢れのこと。呪いは対人関係から生まれる妬みや悪意のことだ。それらが蓄積されると不運に見舞われやすくなる。
筆者は秘諸姫様が浄化を行うところを幸運にも見ることができ──
──なぜ無償奉仕同然で奇跡を配るのだろう?
子供のころ、事故で同級生を亡くしたそうだ。予感はあったが、己の才能を知らなかったがために何もできなかった。その経験が彼女の礎になっている。
つぐないであり、能力を持って生まれた責任を果たしているのだと、彼女は悲しげに微笑んだ。
* 熱心な信者の体験談:
秘諸姫様を知ったのは、娘のように私もネイルをしてみようと思ったからでした。袋小町がスピリチュアル系の店でもあることをはじめは知らなかったんです。
人生初のネイルアートは娘からも友達からも評判が良くて、嬉しくなって何度か通いました。
家庭の愚痴もいろいろと聞いてもらえて、私にとってのガス抜きの時間でしたね。
あるとき風邪をひいて、治った後もずっと体調が良くならなくて大変だったんです。……その話を秘諸姫様にしたところ、残念ながら人から呪われているのだと言われ、お守りをもらいました。
すると、不思議と体調が改善していきました。
それからはネイルの相談だけでなく、運気の相談もするようになり、お守りも何度か買い換えました。
お守りの中には秘諸姫様の霊力が宿った塩が入っているんです。変な話、脱臭剤みたいに周りの悪いものを吸ってくれるんですね。
ある夜、家で火事があったんです。目を覚ましたときには病院で、隣で寝ていた夫は助からなかったことを聞きました。娘は一人暮らしを始めていたので無事です。
私はお守りを握ったまま布団の中で意識を失っていたそうです。
病室で喪失感を味わいながら、なんとなくお守りを開けました。そうしたら、中の塩が真っ黒に染まっていたんです。
どうして私だけが助かったのか不思議でしたが、秘諸姫様のおかげだと思いました。
私はお守りをますます大切にするようになりました。
ほどなくして、近所に住む友達が自宅で亡くなったんです。まだ若いのに心臓発作で……。
後から知ったんですが、彼女は夫と不倫関係にあったそうです。私が鈍感だっただけで、娘も知っていました。とても仲が良かった、と。
複雑な気持ちになりますが、秘諸姫様が言っていました。夫は死後の旅に出る道連れを探していたのだろうと。私にはお守りがあったから手を出せず、代わりに彼女を連れて行った……。
納得してしまいました。あの人は一人じゃ何もできないから。
秘諸姫様には感謝しています。




