10 盛り塩団地の夜【2】
「うー、さびっ」
身体をさすりながら部屋に転がり込み、シャワーを浴びた。
家にあるものは好きに使って良いと言われているが、申し訳ないのでタオルもろもろは持参している。
お気に入りのオカルト勝負パジャマに身を包み、ドライヤーで髪を乾かす。
それからキッチンの電気ケトルを拝借して湯を沸かした。
夕飯はカップラーメン。チリトマト味が美味いのだ。赤い食べ物にハズレはないと神は言っている。だから動物の血肉も赤い。
腹を満たし、片付けや歯磨きを済ませて寝室に向かう。最後に怪異が起きた場所だ。
今夜はここで過ごす。知り合ったばかりの女子のベッドに入るのは気まずいから、寝袋も持ってきた。折り畳まれたそれを床に広げていく。
みのむしモードになったら、あとはノックの音を聞き逃さないよう静かにするのみ。
雰囲気を出すため部屋の電気は消した。真っ暗すぎても不便なので、枕元に移動させたテーブルランプだけ点灯しておく。
もちろん、朝になるまで眠る気はない。お菓子やエナドリで時間を潰しながら、怪奇現象との遭遇を祈るのだ。
仮にも学生なので、サボりまくったとしても出席しなければならない授業がある。一泊しかできないのが悔しい。今夜のうちに何かが起きますように。なにとぞ。神さま仏さま悪霊さま妖怪さまエトセトラ。
「あ、ログボまだだったな」
いつもやっているソシャゲを立ち上げた。
スマホをいじっていると、時間はあっという間に進む。
気が付くと、時刻は24時を回っていた。
「……ヨシさんはもう寝たかな」
私が下宿する前は、あの広いお屋敷で一人で住んでいたヨシさん。今夜はさぞ寂しがっていることだろう。ヒヒヒ、私の大切さを思い知るがいい。
といっても、同居とはいえ当たり前に部屋は別々だし、善性の塊のような独身四十男の彼はいつまでも若い女を住まわせることにぶるぶる萎縮していて、夜中に顔を合わせることなど無いのだが。




