第6話
あらかじめ用意されていた会話選択肢も閲覧したが、そうなのではないかと思ってウェンディに呼びかけたら、やはりこのゲームは自動的な音声会話にも対応していた。
つまり──俺は常にゲームプレイヤーとして、役割を演じることを優先するか、欲望のままにゲームをするか──このゲームの開発陣に挑まれているわけだ。
上等。キャラクターの好感度上げつつ、自分の欲望も満たして見せよう。もはやコンフィング機能やヘルプ機能を閲覧せず、無心でゲームプレイしたい欲求が凄まじい。嬉しくて身震いが止まらなかった。
「な、なんなの! ていうかさっきの何!? この腕は何!? 私の溶けちゃった身体は!?」
「ゆっくりと答えてやりたい所だが、その間に人が死ぬぞ?」
「⋯⋯ひ、人が死ぬって、きゃっ!?」
「イッ、キッキ、ギィイイイイイイ!!?」
瓦礫の山から聞こえる悲鳴に向かって、彼女を操作する。獲物である船員を前に舌なめずりしていた骸骨ヒトデたちの背後から、炎をたっぷりご馳走してやった。
「逃げな、安全な場所に! できるだけ人で固まって生き残れ!」
「はっ、はいぃい!」
呆然と俺たちを見ていた船員は弾かれたようにバタバタと折れたスコップを握りなおし、その場を駆け出した。
『実績:1人ヒーローを解除いたしました』
「おっ、人助けをすると実績解除と経験値をもらえるのか、次は10人ヒーローだな」
「実績とか経験値とか、何よそれ!?」
「誰かを助けるヒーローをするか、自分が生き残ることだけを最優先するかは好きにしろ。ヒトデが怖いなら目を閉じてな!」
『緊急ミッション:船員たちをヒトデから救え!』
『緊急ミッション:ヒトデたちをエンゴせよ』
「⋯⋯何だと?」
画面にごく僅かなノイズが走ったあと、左右にそれぞれ目立つように緊急ミッションとやらが提示された。右側が黒字の船員たち救出。左側が赤字のカタカナで援護──選択肢か!
一時停止──は、できないようだ。ぎゃあぎゃあと喚き散らすウィンディの悲鳴も停止していない。
「ええいっ、こっちはもう助けるって決めてんだよ、カタカナ野郎!」
迷っている暇はない。手に掴んだランタンから次々に火炎弾を撃ち込む。スキルツリーで通常弾を選択して習得した攻撃だが、思った以上に手に馴染む。拳でも良いが、まずはこっちを試そう。
だが派手に動きすぎたせいか、ヒトデたちも瓦礫を盾に固まって銃を撃ち始めた。しかも──。
「何あれ、バカでかい大砲!?」
「画面ほとんどとか、デカすぎだろ!」
驚く間もなく巨大な砲弾が発射される。瓦礫を踏みつけて大きく避けるが、宙を泳ぐように砲弾が迫ってくる。
「絶妙で嫌らしい追跡速度だ! 作った野郎、絶対アタマ悪いぜ!」
「言ってる場合!? どうにかしてよゴールドぉお!」
「あいよ、任せな!」
瓦礫を蹴飛ばす操作をしながら同時に星画面を小さく表示させて、一気に5レベルまでアップ。
指が足りないなどのボタン操作とは段違いな追従性に舌を巻きつつ、習得したスキルは横スクロールアクションゲー厶──ド王道中のド王道。
「喰らいやがれ! 『キラーブレイズ!』」
ランタンの中で赤から白──白から青に変わりガタガタガタガタ揺れていた火炎が、ゾロリと牙を剥いて解き放たれる。
圧縮されたエグい熱量がびっしりと牙の生えた本の姿を型どり、砲弾を貫通──ヒトデたちが身を隠していた瓦礫ごと、大砲を派手に連鎖爆破させていた。
「貯め撃ちってやつだ。恨むんじゃねえぞ、お前らが俺たちに火をつけやがったんだからな」
俺たちの勝ちだ。画面には大きく『緊急ミッション:船員たちをヒトデから救え!』クリア! と、華々しく賞賛されていた。




