第18話
奥の部屋から溶接でもしているのか、ジジジと独特な機械を熱する物音と、数人の話し声が聞こえてくる。俺は一応ノックしてみた。
「はーい、どなた?」
「初対面の者だが、突然の来訪を許して頂きたい。ある情報が欲しくて、このラジオ塔を訪れた者だ。中に入ってよろしいかな?」
「⋯⋯入り口や屋上は鍵がかかってたはずだけど、どうしたのかな?」
「ヘアピンとドライバーで開けさせてもらった。内側からもう1度鍵をかけてもいる」
ドアのすぐ向こう側に足音。俺は念のためウェンディを横にズレさせた。突然、ドア越しに銃撃されてもたまらないからな。
「悪いけど、身元がハッキリしない人とはドア越しの会話になるけど、良いかな?」
「かまわない。俺は契約者と呼ばれている類のステイゴールドだ」
「そう。私たちはここのラジオパーソナリティと、修理を請け負ってるウォムの業者だよ。それで、聞きたいことって?」
「2つある。この地域から外に出て、ずっと遠くに行く方法と、この声に聞き覚えないか」
俺はいつもの通りパソコンを操作して、マドカちゃんの録音した声を再生した。
「あいにくだけど、両方とも誰も心当たりがないみたい。でもこのラジオ塔の地下室の資料なら、自由に見てもいいよ。私たちの管轄でもないからね」
「わかった。少ないがこれは勝手に鍵を開けた詫びと礼だ。受け取ってくれ」
俺はスペードの1が描かれたトランプを1枚だけ抜いて、ドアの隙間から通して贈った。
「待って、こちらも聞きたいんだけど、君たちはジウルーンなの?」
「ジウルーンではないな。というか、ジウルーンについては、俺もよく知らないんだが」
「ここ1月前くらいかな。ウォムの深海エリアに急に出てきた乱暴な連中でさ、きな臭くて保安隊が躍起になってるのよ」
急に出てきた、か。外から何らかの手段でやってきたのか、あるいは出入りしているのか。調べて見る価値がありそうだ。
「そうか、悪い連中について行かないように注意するよ。じゃあ、今度はできれば顔を合わせて会おう」
「そう願うわ。じゃあね、ステイゴールド」
会話を切り上げて階段を再び降りていく。4階と3階は事務作業を行う場所だったのか、電源のつかない壊れたパソコンや、壊れて使い物にならない銃器が転がっていて目立つ。
2階と1階は身を隠せるバリケードや銃撃戦の跡、使用済みの地雷部品が床に転がっていた。
「これ、激しい戦闘でもあったのかしら?」
「ヤドカリたちと、何度かやりあったのかもな」
最後の階段を降りる。途端に磯臭い匂いが濃くなってきた。資料室は天井から染み出した海水が貯まっているのか、軽く水没しかけている。
紙の資料なども残っているが、水分でふやけてほとんど読めそうにない。残ってたのは画面が割れているノートパソコンだけだった。
公共用の物だったのか、パスワードはかけられていない。資料の検索履歴をさっそく辿ってると、ある1点が目についた。
「リヴァイアサン、プロジェクト⋯⋯?」
『実績:現実世界の真実□/□』




