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47.U-15ナショナルチャンピオンシップ開催

9月2日。


昨日、U-15ナショナルチャンピオンシップの華々しい開会式が無事に終わり、世界中から集まった若き怪物たちが、ついに日本の地で激突する。そして本日の夜、開催国である日本代表の初戦がいよいよキックオフの時を迎えようとしていた。


そんな日本サッカー界の未来を占う運命の日の昼下がり。


区立青下中学、3年1組の教室では給食を終えた生徒たちが思い思いの昼休みを過ごしていた。その中で一人だけ異様に落ち着きのない男がいた。


白河健一である。


「かぁ! 今日の夜はとうとうU-15ナショナルチャンピオンシップの日本の試合かぁ! くっそ、なんか俺まで心臓がバクバクして緊張すんぜ!」


健一は自分の席で頭を抱え、貧乏揺すりをしながら周囲に響き渡るような大きな声で嘆いていた。その額に、じっとりと脂汗まで滲んでいる。


「ちょっと、なんで白河君が緊張すんのよ。白河君がピッチに立つわけじゃないでしょ?」


呆れたように声をかけたのは明里だった。


「だってよぉ! 蹴太が出んだぞ!? あの蹴太が! 日の丸背負って、世界中のバケモンみたいなやつらと戦うんだぞ!?」


健一は身を乗り出して、バンッと机を叩いた。


「あいつ、いつも涼しい顔してるけどよ、今日みたいな大舞台で本当に緊張しないでちゃんと試合に出られるか、俺は親友として不安でしかたねぇんだよ!」


「親友の白河君がそんなにビビっててどうするのよ。神野君ならいつも通りふてぶてしい顔で点を取ってくれるわよ」


明里はクスリと笑ったが、その瞳の奥にもやはり隠しきれない緊張と興奮が入り交じっていた。


「まぁ、明里の言う通り、蹴太に限ってプレッシャーに押し潰されるようなことはないと思うけどね」


二人の会話に割り込んできたのは、いつもの爽やかな笑顔を浮かべた蒼空斗だった。


「でも、白河君が心配する気持ちもわかるよ。なにせ、日本の入ったAグループは正真正銘の【死の組】だからね」


蒼空斗はそう言うと、手に持っていたクリアファイルから一枚のプリントを取り出し、健一の机の上に広げた。


それは自宅のプリンターで印刷してきたU-15ナショナルチャンピオンシップのグループステージ組分け表だった。


「いいかい? 今大会は24カ国が参加していて、4カ国ずつ6つのグループに分かれている。グループステージを突破し、決勝トーナメントに上がれるのは、各グループの上位2カ国だけだ」


蒼空斗はプリントに印刷された文字を指先でなぞった。


「さらに得失点差やファウル数などの総合成績で上位4カ国に入れば、決勝トーナメント1回戦のシード権を与えられる。過酷な連戦になる国際大会において、このシード権は優勝を狙う上で喉から手が出るほど欲しいアドバンテージだ。日本代表としてもできればシードを勝ち取りたいところだろうね」


蒼空斗は机に置かれた組分け表をじっと見つめた。そしてそこに印刷されている文字は、サッカーを知る者であれば誰もが絶望的なため息を漏らすであろう、残酷な名前の羅列だった。


「だけど・・・その上位2カ国に入るためにはこの2つの超大国のうち、どちらか片方を確実に倒さないといけない・・・」


蒼空斗の指先が止まった場所。

そこには【ドイツ】と【イタリア】という、欧州の5大リーグを擁するサッカーの本場、その絶対的な強豪国の名前が誇らしげに並んでいた。


「同世代とはいえ、向こうの代表にはすでに欧州のトッププロ組織のユースでレギュラーを張っているような連中がゴロゴロいる。今の日本の育成レベルとは文字通り桁違いだ」


「・・・」


健一は押し黙った。自分でも事前にネットで調べて絶望し、口をあんぐり開けたことを思い出した。


「でもその前に・・・今日の初戦の相手は【コスタリカ】よね」


明里がプリントのもう一つの国名を指差した。


「ドイツとイタリアに比べれば格下に見えるかもしれないけど、決して油断できる相手じゃない。もし・・・もしここで勝てなかったら・・・」


明里はその言葉の続きを言えなかった。


初戦のコスタリカ戦でつまずけばその後のドイツ戦、イタリア戦は背水の陣となる。事実上のグループステージ敗退を意味する。


蒼空斗の重い解説と明里の懸念に健一は完全に言葉を失い、さらに深く頭を抱え込んだ。


「俺達は1位通過で抜けるつもりだ」


不意に後ろから静かで、しかしよく通る声が響いた。


「!」


「蹴太!」


健一が弾かれたように顔を上げると、そこには見慣れた青下中学の学生服を着た神野蹴太が、カバンを肩に掛けて気怠げに立っていた。


「お前! なんでここにいんだよ! 代表の合宿はどうしたんだよ! まさか、久森監督に逆らってクビになったのか!?」


健一が椅子を蹴倒す勢いで立ち上がり、蹴太に詰め寄る。


「アホか。そんな訳無いだろ」


蹴太は健一の顔を鬱陶しそうに手で押し除け、ため息をついた。


「俺はまだ義務教育中の中学生だぜ? どんなに代表の活動があろうと、学校に来るのは義務だろうが。まぁ、昨日と今日の午前中は、大会の事前会見とか代表の諸々の用事で来られなかったがな」


蹴太はそう言いながら、クラスメイトたちが驚きと好奇の目で一斉に自分に注目しているのを完全に無視し、悠然とした足取りで自分の席へと向かった。そして椅子に腰を下ろすと、カバンの中から夏休みの宿題のプリントや提出物を引っ張り出し、何事もなかったかのように黙々と確認作業を始めた。


「いや、義務って・・・今日の夜、お前試合だろ!?」


健一と蒼空斗、明里の三人は慌てて蹴太の机の周りへと移動した。


「おい蹴太! 本当に大丈夫なのかよ!」


健一がすがるような目で蹴太の顔を覗き込む。


「何がだ?」


蹴太は提出物のプリントから目を離さずに応える。


「何がって・・・チャンピオンシップだよ! さっき月影が言ってた通り、俺たちのグループは完全に【死の組】に入ってるじゃんか! ドイツとイタリアだぞ!? 本当に勝てるのかよ!」


健一の悲痛な叫びに蹴太はピタリと手を止めた。そしてゆっくりと顔を上げ、健一の目を真っ直ぐに見据えて、一言あっけなく返した。


「知らん」


「・・・はぁ!?」


健一がずっこけそうになるのを尻目に蹴太は宿題のプリントを綺麗にまとめ、机の中にしまった。そして身体を完全に健一たちの方へ向け、腕を組んだ。


「サッカーに【確実】や【絶対】はない。それはあの久森監督も協会の柳野って人も言っていた。ましてや相手は世界だ。どんなに準備をしても、どんなに俺が点を取っても、味方がミスをすれば負ける時は負ける。だから軽々しく【絶対に勝てる】なんて無責任なことは言えない」


蹴太のその言葉はいつもの冷めた態度とは違い、どこか重く、そして地に足のついた凄みのある響きを持っていた。


あの地獄のように過酷な2週間の合宿を生き抜き、全国から集まったエリートの怪物たちと削り合い、そして世界基準の【90分】という大人の時間を身体の髄まで刻み込んできた男。


日の丸を背負うという常軌を逸した重圧を、逃げることなく真っ向から受け止めた代表選手としての凄みがその言葉の端々に滲み出ていた。


健一はおろか、蒼空斗や明里も蹴太のその見違えるような空気に圧倒され、押し黙るしかなかった。


「・・・まぁ、」


蹴太は静まり返った三人を見て、ふっと口角を上げた。


「逆に言えば、俺達が確実に負ける道理も無いがな」


蹴太の顔に浮かんだのは強大な敵を前にしても決して折れることのない、ストライカーとしての自信に満ちた不敵な笑みだった。


理不尽なステイタスを持ちながらも、それを驕ることなく、限界まで自分を追い込んできた自負。世界を相手に自分の【個】の力がどこまで通用するのか、試したくて仕方がないという、飢えた獣の顔。


その表情を見た瞬間、蒼空斗の顔にパァッと明るい笑顔が広がった。


「成長したんだね、蹴太。あの代表合宿で」


「ふっ」


蹴太は蒼空斗の言葉に直接は応えなかった。ただ鼻で小さく笑っただけだった。しかし蒼空斗はその表情だけで全てを理解した。多くを語る必要はなかった。


それから午後の授業は蹴太にとっては何の変哲もない中学生としての日常の時間だった。しかしクラスメイトたちは神野蹴太が日本代表に選ばれたという規格外の事実をまだ完全には消化しきれておらず、遠巻きにチラチラと視線を送ってくるばかりで、直接話しかけてくる者はいなかった。そして、放課後を告げるチャイムが鳴り響く。


蹴太は誰よりも早くカバンを掴み、帰る用意をした。


「蹴太!」


教室を出ようとした蹴太の背中に健一が大きな声を掛けた。


「なんだよ」


蹴太が振り返る。


「俺は信じているからな! お前が世界をぶっ飛ばすところを!」


健一は自分の胸をドンと叩き、泥臭く、真っ直ぐな瞳でエールを送った。


「・・・バカ言え。まだ俺が今日の試合をスタメンで出るとは言ってないぞ。代表のFWは俺だけじゃない」


蹴太は照れ隠しのように顔を背けて返す。


「それでもだ! ベンチからでも途中出場でも関係ねぇ! ピッチに出たら、絶対にゴールを奪えよ!」


健一の熱い言葉に蒼空斗も明里も力強く頷いている。


蹴太は三人の顔を順番に見渡し、そして静かに、しかし絶対の覚悟を込めて頷いた。


「・・・任せろ」


蹴太はそう言い残し、教室を後にした。


校門の外にはすでに彼を迎えに来ている日本サッカー協会のワンボックスカーが待っていた。そして蹴太がその車に乗り込み、走り去っていくのを、健一、蒼空斗、明里の三人は校舎の窓から黙って、しかし熱い祈りを込めていつまでも見送っていた。


■■


9月2日、18時30分。


東京都内にある蒼空斗の自宅のリビング。


大型の液晶テレビの画面には日本開催の【U-15ナショナルチャンピオンシップ】の初日、日本対コスタリカ戦を中継する特別番組が映し出されていた。


スタジアムは超満員の観客で埋め尽くされている。青いユニフォームを着たサポーターたちの地鳴りのような歓声が、テレビのスピーカーを通してリビングをビリビリと震わせていた。


中学生年代の大会としては異例の集客と注目度。


それはJSAの柳野ダイレクターが、メディアを通じて【日本の未来を変えるかもしれない、規格外の世代】として大々的に煽ったこと、そして何より飛び級でユースに上がっていた至宝、ヤンセン・大河がこのチームに合流したというニュースがサッカーファンの熱狂を呼び起こした結果だった。


「ごめん! 遅れた!」


リビングのドアが勢いよく開き、吉峰春樹が息を切らして駆け込んできた。


「遅いぞ春樹! もうすぐ試合が始まっちまうぞ!」


健一がテレビ画面に食い入るようにかじりついたまま振り向きもせずに怒鳴る。


春樹も慌ててソファに腰を下ろし、健一たちと共にテレビ画面を見つめた。


その傍らで蒼空斗は自身のタブレット端末を操作し、大会の公式サイトにアクセスして、たった今発表されたばかりの本日の日本代表のスターティングメンバーを閲覧していた。


「よし、スタメンが出たよ」


蒼空斗の言葉に健一と春樹が身を乗り出す。本日の日本のシステムは【4-4-2】。


「GK・大童子清隆。背番号1」


蒼空斗が読み上げる。


「DFライン。左サイドバック・鵜飼朝陽、背番号2。センターバック・キャプテンのヤンセン・大河、背番号3。もう一枚のセンターバック・窪田大輔、背番号4。そして右サイドバック・青星俊、背番号5」


「やっぱりヤンセンはキャプテンかぁ!」


健一が感心したように言う。


「MF。ボランチは二枚。国近涼真、背番号10。相方に三國健、背番号7。左インサイドハーフに外丸直樹、背番号6。右インサイドハーフに横畑海夏人、背番号8」


「ここまでは順当なメンバーだね。守備の安定感は抜群だ」


春樹が腕を組みながら分析する。


「そして注目のFWのツートップだけど・・・」


蒼空斗は画面に表示された名前に視線を落とし、少しだけ声を潜めた。


「鷲谷蒼、背番号12。そして武雄颯太、背番号13だ」


「・・・」


(蹴太はまだ出ないか・・・)


蒼空斗はスクロールして画面の下部、控えメンバーの欄にある蹴太の名前を見た。


【背番号9 神野蹴太】


代表チームのエースストライカーの象徴である【背番号9】を与えられながら、ベンチスタート。その事実に蒼空斗は思わず苦笑し、同時に親友のふてぶてしい姿を想像して笑みがこぼれた。


「おいおいおい! 蹴太はスタメンじゃないのかよ!」


健一が納得いかないとばかりに声を荒げた。


「あの化け物みたいな蹴太を差し置いてスタメン張れるやつがいるってのか!? まさか蹴太でもスタメンが難しいとか、どんだけレベル高いんだよ、この代表チームは!」


「「いや!」」


健一の言葉を遮るように、蒼空斗と春樹が全く同時に声を上げた。そして二人は顔を見合わせ、軽く頷き合うと蒼空斗が代表して応えた。


「これは恐らく、久森監督の【温存】策だよ。グループステージは中三日という過酷な短期日程で試合が進んでいく。選手の疲労を考えればできるだけ絶対的な主力戦力は温存したいと監督なら必ず考えるはずだ」


「温存? そうなのか?」


健一が首をかしげる。


「俺も蒼空斗の意見に同意だ」


春樹がテレビ画面に映し出されたコスタリカ代表の選手たちを見ながら言った。


「相手は確かに強豪だけど、ドイツやイタリアに比べれば一応格下と見られているコスタリカだ。なら、最初からフルスロットルで蹴太という【最大のジョーカー】を切らなくても、戦術の完成度と他のメンバーの力で十分に勝てると判断したんだろ」


蒼空斗と春樹はテレビで発表されたメンバーと布陣を見ながら、久森監督の意図を正確に読み解いていた。しかし蒼空斗の胸の奥にはわずかな不安の影がよぎっていた。


「・・・蹴太も言っていたけど、ピッチには【絶対】や【確実】なんてものは存在しない」


蒼空斗が真剣な眼差しでテレビ画面を見つめる。


「相手も国を背負って死に物狂いで来ている。もし予想外の展開になってビハインドを背負うようなことになれば・・・蹴太も後半の勝負どころでは出ると思うよ」


「だな。この初戦は絶対に落とせない。俺たちがここで外野から心配するよりも、それはピッチに立つ蹴太たちのほうが痛いほど分かっていると思うよ」


春樹が祈るようにテレビを見た。


■■


蒼空斗達が固唾を呑んでテレビを見つめているその頃。


巨大なスタジアムの奥深く、静寂で冷たいU―15日本代表のロッカールームでは選手たちが試合前の最後の打ち合わせを行っていた。


「何度も言っているが、今日は絶対に勝たないといけない試合だ」


久森監督の声が張り詰めた空気の中に低く響き渡る。


その言葉にスタメンの11人はもちろん、控えの選手たちも全員が力強く頷いた。


「引き分けすら許されない。勝ち点3以外は意味がない試合だ。お前たちはその重圧のかかるピッチにこれから立つ」


久森の言葉は淡々と冷静だった。だがその瞳の奥には彼自身が海外の底辺で味わってきた泥臭いまでの【勝利への執念】という熱が確かに感じられた。


「それから、神野」


久森が、ベンチで静かにスパイクの紐を結んでいた蹴太へ視線を向けた。

「はい」

蹴太が顔を上げる。


「お前はこのチームの【矛】だ」


久森の言葉に周囲の選手たちの視線が蹴太に集まる。


「チームがピンチの時、あるいは絶対に1点が欲しい時。いつでも俺の合図で相手の心臓を貫けるように、ベンチで爪を研ぎ澄ませておけ」


「・・・分かりました」


蹴太は短く答え、己の役割を静かに噛み締めた。ベンチスタートであることに不満はない。自分が出た瞬間に試合を終わらせる。それだけ。


「よし! 全員円陣だ!」


キャプテンマークを腕に巻いたヤンセン・大河が、パンッと大きく手を叩いて立ち上がった。


代表メンバー26名、久森監督、そしてサポートスタッフ全員がロッカールームの中央で巨大な一つの円を組む。互いの肩を組み、頭を寄せ合う。


「俺達は乗り越えた。あの地獄のような合宿をな。正直、吐くほどきつかっただろ?」


ヤンセンの言葉に青星や佐々木たちが思い出すだけでも嫌だとばかりに苦笑いを漏らす。


「あんな理不尽な練習を乗り越えた俺達が、世界相手にここでビビる理由なんかどこにもねぇ!」


ヤンセンの声が次第に熱を帯び、ロッカールームの壁を震わせるほどに大きくなっていく。


「俺達は勝つ! 90分間、全員で出し切るぞ!」


「「「「オォォォォォ!」」」」


ヤンセンの掛け声に合わせ、円陣が爆発するような雄叫びを上げた。


円陣が解けるとヤンセンを先頭にして、選手たちが決戦の舞台へと歩みを進める。


コンクリートの通路を抜け、ピッチへと続く入場ゲートの前に選手たちが整列する。ゲートの向こうからは数万人の大観衆の地鳴りのような歓声が降り注いでいた。


(さぁって・・・行きますか。待ってろよ、世界)


列の最後尾付近で、蹴太は暗い通路から光り輝くピッチを見つめ、静かに闘志を燃やしていた。そしてピッチへ足を踏み入れる直前、蹴太は自分にしか見えない空中のステイタス画面を呼び出し、最終確認を行った。


――――

神野蹴太(かみのしゅうた)


【基本スキル】

フィジカル:F104

スピード:F115

ドリブル:F115

スタミナ:F108

シュート:E203

キープ:F110

パス:F107


【固有スキル】

・神の寵愛:圧倒的なサッカー選手としての能力が付与される

・決定力:シュート時、ボールがゴールの枠内に収まりやすくなる

・両利き足:両足が利き足になり、ボールをコントロールできるようになる

・クイックモーション:威力は下がるが、クイックシュートを撃てるようになる

・ピンポイントクロス:対象に対してピンポイントでクロスをあげられるようになる

・精密パサー:パスミスがなくなり、精度が上がるようになる

・キラーパス:的確なスルーパスを出せるようになる

・パワーシュート:ミドルレンジからのシュートが入りやすくなる

・ヘディング:ヘディングシュートが入りやすくなる

・吸着トラップ:トラップミスがなくなるようになる

・ワンタッチ:ワンタッチでプレーができるようになる

・丈夫な身体:怪我がしにくくなる

・フリーキッカー:フリーキックがゴールに収まりやすくなる

・ブロッカー:相手と身体を密着させることで、パスとシュートを封じやすくする

・瞬間最高初速:一歩目で自身の最大スピードを出せる

――――


蹴太はその画面に表示された文字を見て、ふっと口角を吊り上げた。あの合宿の夜。無機質な声で告げられた【ランク制限の撤廃】。


その結果としてこれまでジュニアユースの枠組みの中で【SSS1000】という上限でカンストしていたステイタスは、世界という新たな、そして広大なステージへと引き上げられてリセットされた。


表示されている数値は【Fランク】や【Eランク】という、かつての初期状態のような低いアルファベットに戻っている。数値自体も100や200台へと激減している。


だが蹴太に焦りは一切なかった。


ピッチの芝を踏みしめる足の裏の感覚が、全身の筋肉の恐ろしいほどの躍動が、絶対的な事実を教えてくれている。


力が落ちたのではない。自分の限界の【器】そのものが、中学生という矮小な枠組みを完全に破壊し、プロや世界基準という果てしない大きさへと【進化】したのだということを。


これまで血反吐を吐いて積み重ねてきた技術と感覚は、細胞の奥深くに一切失われることなく刻み込まれている。


そして何よりあの初期から存在していた固有スキル【神の祝福】が、【神の寵愛】という恐ろしい名前に変化していた。


【圧倒的なサッカー選手としての能力が付与される】。


ステイタスが伸びやすくなるという次元を超えた、サッカーの神からの明確な贔屓。


(祝福が【寵愛】に変わったか。全く、俺にとことん甘くて過保護なサッカーの神様だこと)


蹴太は心の中で、自分にこの理不尽なチートを与えた見えざる神に向かって不敵な笑みを浮かべた。


この理不尽なまでの神の贔屓。それを背負い、使いこなし、そして世界をねじ伏せる。それが自分に課せられた、ストライカーとしての【責任】だと。


蹴太は空中のステイタス画面を消し去った。そして光り輝く大観衆のピッチへと、迷いなくその足を踏み入れた。

明日は恐らく投稿できても1話です。

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