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第98話:岩竜

岩竜は大地を震わせながらゆっくりと立ち上がった。全身を覆う岩の鱗は鈍く光り、巨体が動くだけで洞窟内の小石が跳ね上がる。黄金色の瞳が百華繚乱を見据え、低いうなり声を響かせた。「来ます。」

カレンが剣を構える。

「青真さん、正面は私が受けます。援護をお願いします。」

「分かった。」


次の瞬間、岩竜が地面を蹴った。巨体とは思えない速度で突進してくる。カレンが真正面から迎え撃ち、激しい金属音が洞窟へ響いた。衝撃だけで足元の岩盤に亀裂が走る。

「重い……!」

カレンが歯を食いしばる。

闇風はすぐさま側面へ回り込み、岩竜の脚へ短剣を突き立てた。


しかし、短剣は岩の鱗をわずかに削っただけだった。

「硬いですね。」

闇風が距離を取る。

その間にアルナが風魔法を付与した矢を放ち、岩竜の視界へ砂塵を巻き上げた。

「今よ!」

メグの魔人形達が一斉に飛び掛かるが、岩竜は尻尾を振り回し、まとめて吹き飛ばした。


「普通の攻撃じゃ通らないか。」

青真は剣を握り直す。

未来予知を発動。

数秒先の光景が脳裏へ流れ込む。

岩竜は右前脚を振り上げ、そのまま地面へ叩き付ける。

「全員、跳べ!」

青真の声と同時に全員が飛び退く。


直後、岩竜の前脚が地面へ激突した。

轟音と共に岩盤が砕け、無数の岩槍が地面から突き出す。

もし反応が遅れていれば串刺しだった。

「助かりました。」

闇風が静かに礼を言う。

「未来予知様々だな。」

青真は苦笑した。


岩竜は咆哮を上げ、大きく息を吸い込む。

青真の未来予知が再び警鐘を鳴らした。

「ブレスだ!」

全員が散開する。

次の瞬間、灰色の吐息が一直線に放たれ、通り道の岩壁が瞬く間に石化していった。


「岩石化か……!」

アルナが驚く。

吐息が掠めた魔人形の腕は灰色へ変わり、そのまま動かなくなった。

メグはすぐに魔人形を解除する。

「危なかった……。」


「口が弱点かもしれません。」

カレンが叫ぶ。

「でも、あのブレス中しか隙がありません。」

青真は未来予知を繰り返す。

何度見ても答えは同じだった。

ブレス直後だけ、口内の奥に青白く輝く魔石が見える。


「なら、俺が撃つ。」

青真は剣を構えたまま前へ出る。

岩竜は再び突進してくる。

その巨体を受け止めた瞬間、鍔迫り合いとなった。

「ぐっ……!」

腕へ凄まじい重圧が掛かる。

踏ん張る足が少しずつ後ろへ滑っていく。


「青真さん!」

カレンが援護へ向かおうとするが、岩竜の尻尾が進路を塞ぐ。

闇風も飛び込めない。

青真は限界まで押し込まれた瞬間、自ら力を抜いて横へ転がった。

未来予知通り、岩竜は勢い余って前へ踏み込む。


「今だ!」

岩竜は大きく口を開き、再び岩石化ブレスを放とうとした。

その一瞬。

青真は右手を突き出す。

「マナショット!」

光弾は一直線に飛び、口内奥の魔石を正確に撃ち抜いた。


岩竜は苦しげな咆哮を上げ、大きく仰け反る。

「畳み掛けます!」

闇風が背後へ回り込み、脚の関節を斬り裂く。

アルナの風刃が翼を切り裂き、メグの魔人形達が岩竜の動きを押さえ込んだ。

最後にカレンが大きく跳び上がる。


「終わりです!」

渾身の一撃が岩竜の首筋へ叩き込まれた。

岩の鱗へ亀裂が走り、そのまま首を深く斬り裂く。

岩竜は大きく吠え、ゆっくりと崩れ落ちた。


静寂が洞窟を包む。

青真は大きく息を吐きながら剣を鞘へ納めた。

「まだまだ剣じゃ敵わないな。」

「でも、未来予知とマナショットを組み合わせれば戦える。」

闇風は静かに頷く。

「それが青真さんの戦い方です。」

カレンも微笑みながら剣を収めた。

「少しずつですが、確実に強くなっています。」


岩竜の亡骸は淡い粒子となって消えていき、その場には古びた宝箱だけが残された。


「アーティファクトですね。」


カレンが宝箱を開けると、中には灰色の魔石が埋め込まれた黒い腕輪が収められていた。


「鑑定します。」


メグが静かに魔力を流し込む。


「C級アーティファクト『岩竜の腕輪』です。装備者の防御力と耐久力を少し上昇させる効果があります。」


「流石は岩竜って感じの性能だな。」


青真は腕輪を手に取り、小さく笑った。


「悪くないな。」


ダンジョンを出た一行は、そのまま王都の冒険者ギルドへ戻った。


受付で討伐証明となる岩竜の魔石を提出すると、受付嬢は目を丸くした。


「確認しました。C級ダンジョン『岩竜峡谷』攻略、おめでとうございます。」


「初挑戦でボスまで討伐するなんて、本当に凄いですね。」


報酬を受け取った青真達はギルドを後にする。


王都の夕焼けを眺めながら、アルナが口を開いた。


「これでC級は十分通用するわね。」


「次はいよいよB級ダンジョンか。」


青真が呟く。


闇風は静かに頷いた。


「今の実力なら挑戦する価値は十分あります。」


「ですが、油断は禁物です。B級からは魔物の強さが一段階変わります。」

「望むところだ。」

青真は新しく手に入れた剣を肩へ担ぎ、不敵に笑う。


四神獣との戦い、そして魔王討伐。

その大きな目標へ向かい、一歩ずつ確実に前へ進む。

次なる挑戦――B級ダンジョンが、青真達を待ち受けていた。


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