第96話:王都
飛龍襲撃から半日後。
青真達はついに王都へ到着した。
巨大な白亜の城壁は空へ届きそうなほど高く、無数の尖塔が街の中心から突き出ている。
整備された石畳の大通りには人々が行き交い、各地から集まった冒険者や商人達の活気で満ちていた。
「これが王都か……」
青真は思わず足を止めた。
アルナはそんな青真を見て小さく笑う。
「どう? 凄いでしょ」
「想像以上だな」
「私も最初に来た時は驚いたわ」
そんな会話を交わしながら、一行は王都の中心部へ向かう。
まず向かう先は冒険者ギルド本部だった。
王都冒険者ギルド本部はまるで城のような建物だった。
中には大勢の冒険者が集まっている。
だがその多くはC級からB級だ。
時折A級らしき冒険者も見かけるが数は少ない。
S級など当然見当たらない。
王都だからといって強者ばかりではないらしい。
受付へ向かうと職員がすぐに反応した。
「百華繚乱の皆様ですね」
どうやら飛龍討伐の報告は既に騎士団から届いているようだった。
一行は応接室へ案内される。
しばらくして職員が書類を閉じた。
「飛龍二体の討伐及び多数の飛龍迎撃への貢献を確認しました」
「その功績を認め、ランク昇格を認定します」
青真はA-級。
メグとアルナはA級。
カレンと闇風はA+級。
新しい認定証を受け取った一同は顔を見合わせた。
王都初日としては上々の成果だった。
「王都初日から昇格か」
青真が苦笑する。
「悪くないわね」
メグも満足そうに頷いた。
「まだ上はいますけどね」
カレンの言葉に全員が頷く。
ここは王都なのだ。
ギルドを後にした一行は王立大図書館へ向かった。
目的はS級アーティファクトとアイアングリッチに関する調査である。
王立大図書館は王城近くに建てられた巨大な施設だった。
館内へ入った瞬間、一同は思わず息を呑む。
天井まで届く本棚。
見渡す限りの蔵書。
「凄いわね……」
メグの目が輝く。
「今日は帰ってこないかもしれないな」
青真が苦笑した。
一行は手分けして資料を探し始める。
数時間後。
最初に成果を見つけたのはメグだった。
「青真、これ見て」
呼ばれた先には古びた文献が置かれていた。
そこには気になる文章が記されている。
『四神獣を従えし異邦の管理者』
青真は眉をひそめた。
「異邦の管理者……」
「管理者ってことはアイアングリッチ側の存在かしら」
メグが呟く。
闇風も資料を覗き込んだ。
「続きは?」
「破損してる」
肝心な部分は失われていた。
だが別の文献にはさらに気になる単語が残されていた。
『S級アーティファクト』
『真武解放』
「真武解放?」
青真は首を傾げる。
聞いたこともない言葉だった。
「武器に関する技術でしょうか」
カレンが推測する。
「説明が残ってればよかったんだけどね」
結局分かったのは名前だけだった。
それでも収穫はあった。
異邦の管理者。
S級アーティファクト。
真武解放。
全てがどこかで繋がっている気がする。
「アンタは何を残そうとしたんだ……」
青真は小さく呟いた。
夕方。
百華繚乱は宿へ戻った。
食事を取りながら今日の情報を整理する。
そんな中。
アルナがふと思い出したように口を開いた。
「そういえば百華繚乱の戦闘役割ってどうなってるの?」
「今後一緒に戦うんだから確認しておきたいの」
確かにもっともな話だった。
闇風が先に答える。
「俺は前衛兼斥候」
「私は支援と錬金術ね」
「私は近接戦闘担当です」
最後に視線が青真へ向く。
「俺は指揮と魔法だな」
そう答えた瞬間だった。
「未来予知もあるけどね」
メグが何気なく付け加える。
アルナの動きが止まった。
「……は?」
数秒の沈黙。
「未来予知?」
「数秒先だけだけどな」
青真はあっさり答える。
アルナは勢いよく立ち上がった。
「なんでそんな重要なこと今まで言わなかったのよ!?」
「聞かれなかったし」
「普通聞く機会ないでしょ!」
宿の一角に笑いが起きる。
だがアルナは真剣だった。
腕を組みながら考え込む。
「ちょっと待って」
「未来見えるのよね?」
「まあ」
「だったら前出ればいいじゃない」
今度は青真が固まった。
「……は?」
「攻撃が来るの分かるんでしょ?」
「避けられるじゃない」
あまりにも当然のような言葉だった。
青真は言葉を失う。
考えたこともなかった。
これまでずっと後方指揮が自分の役割だったからだ。
「確かに理屈は通っていますね」
闇風が頷く。
「悪くない考えだと思うわ」
メグも賛成する。
そして。
カレンが口を開いた。
「それなら私が剣を教えます」
「は?」
青真の間抜けな声が響いた。
「未来予知と剣術は相性が良いと思います」
「少なくとも今より前線で戦えるようになるはずです」
カレンは真面目な顔だった。
「いや待て」
「明日からですね」
即決だった。
翌日。
王都訓練場。
木剣を持った青真が立っていた。
その正面にはカレン。
「始めます」
次の瞬間。
ゴッ。
鈍い音が響いた。
「痛っ!?」
「遅いです」
ゴッ。
「未来は見えてる!」
「体が追いついてません」
ゴッ。
青真の悲鳴が訓練場へ響き渡る。
それでも彼は立ち上がった。
異邦の管理者。
S級アーティファクト。
真武解放。
そして四神獣。
青真達の新たな戦いは、ここから始まる。
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