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最強ゲーマーの《多世界攻略録(マルチバースアーカイブ)》  作者: 紅柳
第三部異世界編 第一編 城塞都市編
85/157

第85話:ダンジョンボス

ドン。

ドン。

ドン。


重い足音が洞窟内へ響く。


先程までのゴブリンやコボルトとは明らかに違う存在感だった。

四人は自然と武器を構える。


「……ボスか」


青真が呟く。


通路の先に広い空間が見えてきた。

そこは洞窟最奥部だった。


中央には巨大な岩。

その前に立つ影。


身長は二メートル近い。


全身を筋肉で覆われた巨体。

皮の鎧の上から鎖帷子を身に着けている。

右手には鉄剣。


そして赤い瞳がこちらを睨んでいた。


「ホブゴブリンですね」


カレンが静かに言う。


しかし敵は一体ではなかった。


ホブゴブリンの前へ四体のゴブリンが進み出る。


木製の盾。


鉄の剣。


先程までの雑魚とは違う。


明らかに訓練された兵士だった。


「護衛か」


青真が呟く。


「先に雑魚を片付けるぞ」


闇風が短く言う。


次の瞬間。


ゴブリン戦士達が突撃してきた。


「行きます!」


真っ先に飛び出したのはカレンだった。


銀色の剣が閃く。


一体目のゴブリン戦士が盾を構える。


しかし。


盾ごと斬り裂かれた。


「ギャッ!?」


断末魔と共に倒れる。


残る三体が一斉に襲いかかる。


だがその背後から闇風が消えた。


いや、速すぎて見えなかっただけだ。


気付いた時には二体目の首筋へ短剣が突き刺さっていた。


ゴブリン戦士が崩れ落ちる。


「残り二体!」


青真が叫ぶ。


同時にマナショットを放つ。


青い光弾が命中。


一体が吹き飛ばされた。


そこへメグが杖を向ける。


「ファイアボルト」


火の矢が一直線に飛ぶ。


命中。


ゴブリン戦士は炎に包まれながら倒れた。


護衛は全滅。


わずか数十秒だった。


「グォォォォォッ!!」


ホブゴブリンが怒号を上げる。


地面を蹴り、一気に距離を詰めてきた。


速い。


巨体とは思えない速度だった。


鉄剣が振り下ろされる。


だが。


「右!」


青真の未来予知が先に動いていた。


意念伝達で仲間へ警告。


カレンが横へ跳ぶ。


轟音。


先程まで立っていた場所へ剣が叩き込まれる。


岩が砕け散った。


「結構な威力ですね」


カレンが笑う。


だが怯んではいなかった。


剣を構え直し、一気に踏み込む。


斬撃。


ホブゴブリンが鉄剣で受け止める。


金属同士が激しくぶつかった。


その隙を突くように闇風が背後へ回り込む。


短剣が脇腹へ突き刺さる。


しかし。


「硬いな」


闇風が眉をひそめた。


筋肉と鎧で威力が殺されている。


ホブゴブリンは咆哮しながら腕を振るう。


闇風が後退。


そこへメグが魔法を放った。


「フレイムバースト!」


炎が炸裂する。


爆風と熱気が洞窟内へ広がった。


ホブゴブリンがよろめく。


その瞬間。


青真の未来予知が勝利の光景を映した。


「今だ!」


カレンへ意念伝達。


カレンは迷わなかった。


一歩。


二歩。


三歩。


最高速度まで加速する。


そして。


「はあああああっ!!」


渾身の一撃。


銀閃。


剣がホブゴブリンの首を斬り裂いた。


巨体が揺れる。


鉄剣が地面へ落ちる。


次の瞬間。


ホブゴブリンは大きな音を立てて倒れた。


静寂。


誰も動かない。


数秒後。


「終わったな」


青真が息を吐く。


「思ったより強かったです」


カレンが剣を収める。


「でも勝てない相手じゃなかった」


闇風も頷いた。


確かにこの世界の魔物は少し強い。


だが青真達もまた二つの世界を攻略してきた戦士達だ。


F級ダンジョン程度で止まるつもりはなかった。


その時。


メグが奥を指差した。


「見て」


最奥部の岩陰。


そこには一つの宝箱が置かれていた。


「おおっ!」


青真の目が輝く。


四人は宝箱へ近付いた。


闇風が周囲を警戒する。


「罠は無い」


その言葉を聞き、青真が蓋を開けた。


中に入っていたのは革製の鞄だった。


「……鞄?」


青真が首を傾げる。


「ハズレですか?」


カレンも不思議そうな顔をする。


しかしメグは目を見開いた。


「ちょっと待って」


鞄を手に取る。


魔力を流し込む。

そして。

「これ、アーティファクトよ」

「え?」


青真達が同時に声を上げた。


「F級アーティファクト、マジックバッグ」


メグが笑う。

「内部空間拡張型ね」

「見た目の二倍くらい収納できるわ」

青真は鞄を受け取った。

試しに中を覗く。

確かに見た目以上に広い。


「おお……」


思わず感嘆の声が漏れる。

派手な武器ではない。

だが冒険者にとっては間違いなく便利な道具だった。


こうして青真達は異世界で初めてのアーティファクトを手に入れた。

そして。

異世界での最初のダンジョン攻略を無事達成したのだった。

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