第82話:城塞都市アルス
狼の魔物を倒した青真達は、遠くに見えた街を目指して歩き続けていた。
草原はどこまでも広がっている。
見上げれば青空。
吹き抜ける風は心地よい。
だが誰も警戒を解いてはいなかった。
「それにしても広いな……」
青真が周囲を見渡す。
遠くには巨大な山脈。
さらに空中には浮かぶ岩まで見える。
日本では絶対に見られない光景だった。
異世界という実感が少しずつ湧いてくる。
「本当に別世界なんですね」
カレンが呟く。
「今さら?」
メグが苦笑する。
「でも実際に街とか見ると実感するわ」
四人はそんな会話を交わしながら歩き続けた。
二時間ほど経った頃。
ようやく街の全貌が見えてくる。
巨大な石造りの城壁。
何本もの監視塔。
城壁の上には武装した兵士達の姿も見えた。
かなり大きな都市らしい。
「思ったよりデカいな」
闇風が感心したように言う。
街道には馬車らしきものも走っていた。
しかし馬ではない。
大型の鹿のような生物が荷車を引いている。
やはりここは異世界だった。
やがて四人は城門へ到着する。
入口には兵士達が立っていた。
どうやら検問らしい。
順番待ちの列もできている。
青真達も最後尾へ並んだ。
しばらくして自分達の番が来る。
兵士が四人を見回した。
「身分証を提示しろ」
予想通りの要求だった。
当然そんなものは持っていない。
青真は咄嗟に答える。
「旅の途中で荷物を失いました」
「魔物に襲われて……」
兵士は怪訝そうな顔をする。
しかし完全には疑っていないようだった。
「最近そういう連中が多いな」
兵士は溜息を吐く。
「なら簡易検査だ」
そう言って青く光る水晶を持ってきた。
青真達は順番に触れる。
水晶は淡く光っただけだった。
兵士は頷く。
「問題なし」
どうやら犯罪者や魔物を判別する道具らしい。
四人は無事に街へ入ることができた。
門を抜けた瞬間。
目の前の光景に思わず息を呑む。
石畳の大通り。
露店。
鍛冶屋。
宿屋。
人々の活気が街中に溢れていた。
冒険者らしき武装集団。
ローブ姿の魔術師。
獣人らしき耳を持つ者までいる。
まさにファンタジー世界そのものだった。
メグなどは完全に目を輝かせている。
「まずは情報収集だな」
青真が言う。
三人も頷いた。
帰る方法を探すにしても情報が必要だ。
四人は大通りを進んでいく。
その時だった。
「おい」
闇風が足を止めた。
珍しく何かに興味を示している。
全員がその視線の先を見る。
そこには巨大な建物があった。
三階建てほどの石造りの建築。
出入りする武装した男女。
入口の上には剣と盾を組み合わせた紋章。
そして大きな文字。
誰が見ても一目で分かる看板だった。
【冒険者ギルド】
「おお……」
思わず青真が声を漏らす。
異世界物で何度も見た名前。
まさか本当に目の前で見る日が来るとは思わなかった。
カレンも少し興奮しているようだった。
「冒険者ギルドですね」
「王道だな」
闇風が小さく笑う。
メグも頷いた。
「情報収集するにはちょうど良さそうね」
青真は建物を見上げる。
ここならこの世界のことを知れるかもしれない。
そして何より。
今後の活動拠点にもなりそうだった。
「行ってみるか」
青真が扉へ向かう。
カレン。
メグ。
闇風も続いた。
重厚な木製の扉に手を掛ける。
ギィッ――
扉が開く。
中から響いてきたのは人々の喧騒だった。
酒を飲む冒険者達。
依頼書を眺める者達。
受付で報酬を受け取る者達。
まさに冒険者達の拠点だった。
「すげぇ……」
青真は思わず呟く。
ゲームや小説で何度も見た光景。
だが実際に見るのは初めてだった。
四人はそのまま受付へ向かう。
「いらっしゃいませ」
受付には若い女性が立っていた。
明るい茶髪。
柔らかな笑顔。
いかにも受付嬢という雰囲気だった。
「冒険者登録をお願いしたいんですが」
青真がそう言うと、受付嬢は少し驚いた顔をする。
「四人ともですか?」
「はい」
「かしこまりました」
受付嬢は慣れた様子で説明を始める。
冒険者登録には適性検査が必要。
魔水晶による能力測定を行う。
結果によって初期ランクが決まる。
そんな内容だった。
やがてギルド奥の部屋へ案内される。
そこには巨大な青い水晶が置かれていた。
高さは二メートル近い。
内部では淡い光が揺らめいている。
「こちらが魔水晶です」
「手を触れてください」
「能力を総合的に測定します」
受付嬢が説明する。
周囲の冒険者達も興味深そうに集まってきた。
最初は青真。
右手を水晶へ置く。
その瞬間。
眩い光が迸った。
「えっ?」
受付嬢が固まる。
水晶に文字が浮かび上がった。
総合評価
B+
会場がざわつく。
新人としては異例らしい。
続いてメグ。
結果はA-。
さらにカレン。
結果はA。
最後に闇風。
同じくA。
ギルド内が騒然となる。
新人四人組。
そのうち三人がAランク相当。
あり得ない結果だった。
基準として現実世界でいうFで一般人程
度、Cで軍人程度、Aで世界で指折りの強者のレベルである。
「な、なんなんだお前ら……」
近くの冒険者が呆然と呟く。
受付嬢も完全に固まっていた。
青真は腕を組む。
少しだけ得意げな顔になる。
「まあそりゃな、世界二つ攻略したからな」
当然誰にも意味は分からない。
「世界?」
「何言ってんだアイツ」
「頭でも打ったのか?」
周囲が困惑する中。
メグは額を押さえた。
「多分誰も意味わかってないわよ」
こうして青真達は。
異世界で正式な冒険者となったのだった。
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