第81話:異世界
眩い光が世界を埋め尽くした。
次の瞬間。
青真の身体は硬い地面へと投げ出された。
「ぐっ……!」
咄嗟に受け身を取る。
吹き抜ける風。
青い空。
どこまでも続く草原。
そして遠くには雲に届くほど巨大な山々。
青真はゆっくりと立ち上がった。
「ここは……」
見覚えがない。
リベラルワールドのどのエリアとも違う。
地面の感触も。
風の匂いも。
あまりにも現実的だった。
「青真さん!」
聞き慣れた声が響く。
振り返るとカレンが走ってきた。
その後ろからメグ。
さらに闇風も姿を現す。
「みんな無事か!」
「なんとかね!」
「問題ありません」
「生きてます」
四人は顔を見合わせた。
とりあえず全員無事。
それだけは確認できた。
しかし状況は全く分からない。
なぜここにいるのか。
ここがどこなのか。
何一つ分からなかった。
その時だった。
ガサッ。
近くの草むらが揺れる。
四人の表情が引き締まる。
ガサガサッ!
何かが飛び出した。
それは狼だった。
だが普通の狼ではない。
体長は二メートル近い。
真っ黒な毛並み。
鋭い牙。
赤く光る瞳。
見るからに危険な生物だった。
「魔物……か?」
青真が呟く。
狼は低く唸り声を上げる。
そして。
地面を蹴った。
凄まじい速度。
一直線に突進してくる。
だが。
青真の視界に数秒先の光景が映った。
未来予知。
狼が飛びかかる軌道。
牙の位置。
着地点。
全て見える。
「右へ避けろ!」
青真が叫ぶ。
四人は即座に反応した。
狼の牙が空を切る。
その瞬間。
カレンが剣を振るう。
鋭い斬撃。
しかし狼は素早く後退した。
浅い。
「速い!」
メグが火球を放つ。
炎が狼へ向かう。
だが狼は横へ飛び退いた。
地面が焦げるだけだった。
闇風が背後へ回り込む。
短剣を振るう。
狼は振り返りざまに爪を振った。
火花が散る。
「なかなかやるな……!」
青真は右手を前へ向けた。
掌に魔力を集める。
習得したばかりの魔法。
マナショット。
小さな光弾が生まれる。
まだ弱い。
だが使わなければ始まらない。
「行け!」
光弾発射。
狼の肩へ命中する。
狼の身体が僅かによろめいた。
「今だ!」
青真が叫ぶ。
カレンが飛び出した。
一歩。
二歩。
三歩。
銀色の剣閃。
狼の首筋を正確に捉える。
鮮血が舞った。
狼は苦しげに吠える。
だがまだ倒れない。
異常な生命力。
四人は息を呑んだ。
その瞬間。
闇風が背後から飛び込む。
短剣が喉元を貫いた。
狼の身体が大きく揺れる。
そして。
ドサリ。
巨大な身体が倒れた。
草原に静寂が戻る。
四人はしばらく動かなかった。
やがてメグが口を開く。
「終わった……?」
「たぶん」
青真は警戒を解かない。
周囲を見渡す。
すると。
遠くの丘の向こう。
何かが見えた。
巨大な建造物。
石造りの高い城壁。
幾つもの塔。
そしてその周囲に広がる街並み。
人の住む場所だった。
「街……?」
カレンが呟く。
青真も目を細める。
少なくとも人類は存在するらしい。
「行ってみるしかないな」
青真の言葉に三人が頷く。
ここで立ち止まっていても何も始まらない。
四人は歩き出した。
見知らぬ世界。
見知らぬ空。
見知らぬ大地。
まだ誰も知らない。
この世界で出会う仲間のことも。
魔王軍との戦いのことも。
そして世界の運命を懸けた戦いへ向かうことも。
ただ四人は歩く。
異世界での最初の一歩を。




