第80話:転移
土煙の中。
アルゴは周囲を見回していた。
「どこだ……」
追尾。
散弾。
炸裂。
全て解析済み。
だが。
青真だけが見当たらない。
その瞬間だった。
「見つけた」
背後。
アルゴが振り返る。
そこには青真がいた。
「ッ!」
反射的に指を鳴らす。
パチン。
空間転移。
しかし。
青真は既に見ていた。
未来予知。
四秒先。
アルゴの回避先を。
「終わりだ」
右手を振る。
ビー玉ほどの光。
限界まで圧縮されたマナショット。
ヒュン――――ッ!!
弾丸のような速度。
アルゴの肩を貫いた。
「がぁっ!!」
吹き飛ばされる。
地面を転がる。
アルゴは立ち上がろうとする。
しかし。
足に力が入らない。
青真が歩み寄る。
「馬鹿な……」
アルゴが呟いた。
「最弱魔法だぞ……」
青真は首を振った。
「違う」
「お前が見下してただけだ」
沈黙。
アルゴは苦笑した。
「……なるほど」
そのまま倒れる。
四神傑第四席。
アルゴ敗北。
森林。
グラディウスが咆哮した。
「粉砕衝波・崩天ッ!!」
大地が砕ける。
衝撃波が森を飲み込む。
木々が吹き飛ぶ。
地面が割れる。
だが。
闇風は消えていた。
「どこだァ!!」
グラディウスが辺りを見回す。
その時。
背後。
「こちらです」
「!?」
短剣が閃く。
一撃。
二撃。
三撃。
四撃。
全て急所。
グラディウスが振り向く。
しかし遅い。
「影縫連閃」
最後の一突き。
グラディウスの鎧の隙間を貫いた。
巨体が崩れる。
「見えなかった……」
闇風は静かに短剣を収めた。
「隠密は私の得意分野ですから」
四神傑第三席。
グラディウス敗北。
平原。
第二席の周囲を使い魔が埋め尽くしていた。
狼。
蛇。
鳥。
妖魔。
数百。
「百鬼夜行」
第二席が笑う。
「これで終わりだよ」
使い魔軍団が突撃する。
メグは息を吐いた。
「だったら」
杖を掲げる。
「こっちも全力!」
魔法陣展開。
大量の魔力。
地面が揺れる。
第二席の表情が変わった。
「なに……?」
地面から現れる。
巨大な腕。
巨大な脚。
巨大な胴体。
今までで最大。
超大型ゴーレム。
「いっけぇぇぇ!!」
ゴーレムが拳を振り下ろす。
轟音。
使い魔が吹き飛ぶ。
火属性魔法。
水属性魔法。
雷属性魔法。
薬品。
ゴーレム。
全てを同時投入。
第二席の軍勢が崩壊する。
「そんな……」
「馬鹿な……」
巨大な拳が迫る。
「私は召喚士じゃ倒せ......」
ドゴォォォン!!
直撃。
第二席が吹き飛んだ。
メグは胸を張る。
「だから錬金術師だってば!」
四神傑第二席。
敗北。
渓谷。
第一席が剣を構えていた。
静かに。
ゆっくりと。
そして。
神の術式発動。
「万象再演」
空気が震える。
剣に炎が宿る。
雷が走る。
風が渦巻く。
身体強化。
防御強化。
剣技。
体術。
今まで記録した全て。
全てを再現する。
「これが私の到達点だ」
第一席が踏み込んだ。
速い。
カレンでさえ反応が遅れる。
飛翔斬撃。
炎斬。
雷撃。
全てが同時に襲い掛かる。
だが。
カレンは下段に構えた。
「その剣も」
第一席が言う。
「記録させてもらおう」
カレンは静かに答えた。
「できません」
「何?」
「今から作るので」
踏み込む。
一閃。
飛翔斬撃ですらない。
誰も見たことがない剣。
今この瞬間に生まれた一撃。
「天翔一閃」
白い軌跡が走る。
第一席の目が見開かれた。
「記録……できない……」
斬撃が通り抜ける。
剣が砕けた。
第一席が膝をつく。
四神傑第一席。
敗北。
そして。
青真。
闇風。
メグ。
カレン。
四人が再び合流する。
メグが座り込んだ。
「つっかれたぁぁ……」
闇風も息を吐く。
「なんとか勝てましたね」
カレンが微笑む。
「皆さんご無事で良かったです」
青真も笑った。
終わった。
そう思った。
その時だった。
空が赤く染まる。
全員が空を見上げた。
巨大な魔法陣。
世界そのものを覆うほどの大きさ。
「なんだ……あれ」
青真が呟く。
同時刻。
現実世界。
アイアングリッチ本部。
赤いモニターが並ぶ。
中央に立つ男。
アイアングリッチ。
「人工異世界転移システム起動」
無機質な声が響く。
【対象確認】
【青真】
【闇風】
【メグ】
【カレン】
【転移準備完了】
アイアングリッチが笑った。
「新たな実験の始まりだ」
病院。
蓮とキュアは青真達の病室にいた。
その時。
青真の体が光り始めた。
「これは……?」
蓮が目を見開く。
次の瞬間。
闇風。
メグ。
カレン。
全員が発光した。
「何だ……!?」
キュアが立ち上がる。
光は強くなる。
病室を包み込む。
機械が警報を鳴らした。
そして――
光が弾ける。
次の瞬間。
ベッドの上から。
四人の姿が消えていた。
「青真……?」
蓮が呟く。
返事はない。
病室には静寂だけが残った。
暗闇。
浮遊感。
落下。
そして。
青真は目を開いた。
青空。
草原。
見たことのない世界。
少し離れた場所には。
闇風。
メグ。
カレン。
三人も倒れていた。
青真はゆっくりと立ち上がる。
「ここは……」
風が吹く。
遠くには巨大な山脈。
さらにその向こう。
人類未踏の大陸が広がっていた。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
これで第二部仮想世界編は完結となります。
引き続き次話からの第三部異世界編も応援よろしくお願いします!




