第79話:決着の刻
荒野。
森林。
渓谷。
平原。
アルゴによって分断された四つの戦場で、激戦が続いていた。
――青真 VS アルゴ
パチン。
指が鳴る。
空間が裂けた。
青真は転がるように回避する。
背後の巨岩が切断される。
「相変わらずしぶといね」
アルゴが笑う。
「未来予知だけでよくここまで粘れるものだ」
青真は返事をしない。
代わりにマナショットを放つ。
ヒュン。
スーパーボールほどの光弾。
アルゴは転移して避けた。
「遅い」
二発目。
「軽い」
三発目。
「弱い」
完全に見下している。
だが青真は焦らない。
未来予知を使い続ける。
走る。
避ける。
撃つ。
その裏で。
誰にも気付かれないように。
一発の魔力塊を圧縮し続けていた。
野球ボール大。
それを少しずつ。
少しずつ。
ビー玉サイズへ。
「終わりにしようか」
アルゴが指を鳴らす。
パチン。
無数の空間断裂。
青真の逃げ場が消える。
未来予知。
回避。
ギリギリで避け続ける。
肩が裂ける。
頬が切れる。
それでも止まらない。
「散れ」
五発のマナショット。
アルゴは転移。
しかし今度は軌道が曲がった。
「追尾か」
アルゴが鼻で笑う。
さらに転移。
さらに回避。
だが五発は追い続ける。
「鬱陶しいな」
アルゴが再び指を鳴らした。
その瞬間。
五発が同時に炸裂する。
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!
大きな風船が割れたような音。
砂煙が舞う。
視界が遮られる。
アルゴは僅かに目を細めた。
「なるほど」
「それが切り札か」
土煙の向こう。
青真が小さく笑った。
「掛かったな」
――闇風 VS グラディウス
轟音。
大地が砕ける。
「粉砕衝波ァ!!」
広範囲衝撃波。
森林が吹き飛ぶ。
闇風は木々の間を駆け抜ける。
隠密。
気配遮断。
姿を消す。
しかし。
グラディウスは止まらない。
「逃げるなァ!!」
衝撃。
粉砕。
衝撃。
粉砕。
地形そのものが崩壊していく。
闇風の肩を衝撃波が掠めた。
血が飛ぶ。
だが。
闇風の目は冷静だった。
見ていた。
観察していた。
(三秒)
グラディウスが大技を放った後。
ほんの僅か。
動きが止まる。
(見つけました)
短剣を握る。
「次で決めます」
初めて。
闇風が攻勢へ転じた。
――メグ VS 第二席
巨大な使い魔が咆哮する。
狼。
蛇。
鳥。
魔獣。
数十体。
「潰せ」
第二席が命令する。
大軍勢が襲い掛かった。
「うわっ!」
メグが飛び退く。
直後。
火薬瓶を投げた。
ドン!
使い魔が吹き飛ぶ。
「何?」
第二席が眉をひそめる。
「まだまだ!」
メグは薬品をばら撒いた。
粘着液。
狼型使い魔の足が止まる。
そこへ。
「ライサンダ!」
雷撃。
使い魔を貫く。
さらに。
「魔人形創造!」
巨大ゴーレム出現。
ゴーレム軍団と使い魔軍団が激突した。
第二席は幻覚を発動する。
青真が倒れる。
カレンが血を流す。
闇風が消える。
嫌な光景。
しかし。
メグは杖を振った。
「だから何!」
炎弾。
水弾。
雷撃。
連続発動。
「幻覚なんかで止まると思った!?」
第二席が初めて顔色を変えた。
「なんなの君……」
メグは即答する。
「知るかあ!」
巨大ゴーレムが前進した。
――カレン VS 第一席
剣が交差する。
飛翔斬撃。
記録。
再現。
何度も。
何度も。
何度も。
第一席が使う飛翔斬撃は。
もはやカレン本人と遜色なかった。
「終わりですか」
第一席が問う。
カレンの肩から血が流れる。
だが。
「まだです」
立ち上がる。
第一席が僅かに目を細めた。
「何故そこまで戦う」
カレンは剣を握る。
「守りたい人がいます」
静かな返答。
第一席は少しだけ笑った。
「なら見せろ」
剣を構える。
「私の知らない剣を」
カレンも構える。
飛翔斬撃ではない。
まだ誰にも見せていない構え。
第一席の表情が初めて変わった。
「ほう……」
――そして
土煙の中。
アルゴが眉をひそめる。
「見失った……?」
森林では。
グラディウスが吼える。
「来いよ!!」
平原では。
第二席が巨大ゴーレムを見上げる。
「まさか押されるなんてね……」
渓谷では。
第一席が静かに剣を構える。
「その剣、記録させてもらおう」
そして。
土煙の向こう。
青真の右手には。
戦闘開始から密かに圧縮され続けた。
ビー玉ほどの光が握られていた。
四神傑との戦いは。
ついに決着の時を迎えようとしていた――。
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