第78話:四神傑②
「我ら四神傑だ」
アルゴの声が地下空洞へ響いた。
百華繚乱の面々は自然と武器を構える。
グラディウスだけでも圧倒的強敵だった。
その同格があと二人いる。
冗談ではない。
「へぇ」
メグが杖を握り直す。
「随分と大層な名前じゃない」
銀髪の女がクスリと笑った。
「気の強い娘だねぇ」
その声は妙に甘い。
だが。
どこか粘つくような不快感があった。
「私は第二席」
銀髪の髪を揺らしながら一礼する。
「好きに呼んでくれていいよ」
「呼ぶ気ない」
メグが即答した。
「そう」
女は楽しそうに笑った。
一方。
第一席と呼ばれた男は無言だった。
黒い外套。
腰の剣。
ただ立っているだけなのに。
空気が重い。
カレンが思わず息を呑む。
(強い……)
今まで会った誰よりも。
グラディウス以上かもしれない。
「さて、そろそろ始めようか」
アルゴがフィンガースナップをした。
その瞬間。
巨大な魔法陣が展開された。
「っ!?」
青真が目を見開く。
空間魔法。
しかも大規模。
未来予知を発動する。
四秒先。
見えた。
分断。
「皆離れろ!!」
叫んだ時には遅かった。
世界が歪む。
視界が裂ける。
床が消える。
光が溢れる。
次の瞬間。
全員の姿が消えた。
◇
青真が目を開く。
そこは広い岩場だった。
先程までの地下空洞ではない。
周囲に仲間はいない。
「……やっぱりか」
目の前。
アルゴが立っていた。
「さすがだね」
「空間転移」
青真が周囲を見る。
「最初からこれが目的か」
「半分正解」
アルゴは笑う。
「僕達には時間が必要なんだ」
またその言葉だ。
グラディウス撤退時にも言っていた。
時間。
何かの準備。
何かの計画。
だが。
今は聞き出している余裕はない。
青真は手を前へ突き出した。
マナショット。
ヒュン。
光弾が飛ぶ。
アルゴは横へ転移した。
そして。
少しだけ首を傾げた。
「……?」
解析。
神の術式発動。
数秒後。
アルゴが小さく笑った。
「ああ、思い出した」
再びマナショットが飛ぶ。
アルゴは回避。
笑みを深める。
「マナショットだ」
青真は何も言わない。
「無属性魔法。初級魔法にも分類されない練習用魔法」
「威力は最低クラス」
アルゴは肩を竦めた。
「初期魔法が僕に敵うと思っているのか?」
青真は静かに答えた。
「さあな」
「弱い魔法なのは事実だ」
「なら何故使う?」
「使えるからだ」
アルゴが笑う。
「面白い」
アルゴが指を鳴らす。
空間が裂ける。
青真の足元に魔法陣。
未来予知。
転がる。
直後。
地面が消し飛んだ。
「っ!」
危ない。
今のは転移ではない。
空間そのものを切断した。
アルゴはさらに魔法陣を展開する。
「では始めよう」
青真も構える。
未来予知発動。
マナショット展開。
百華繚乱軍師。
対。
四神傑第四席。
戦いが始まった。
◇
別空間。
荒野。
闇風は静かに短剣を抜いた。
その向こう。
グラディウスが大剣を肩に担いでいる。
「面倒だな」
闇風が呟く。
「またお前か」
「俺は嬉しいぜ」
グラディウスが笑う。
「リベンジできるからな」
「生憎だが」
闇風の姿が消える。
隠密。
「俺は負ける気はない」
グラディウスの笑みが深まった。
「そうこなくちゃな」
第三席対百華繚乱最速。
開戦。
◇
森林地帯。
メグが顔をしかめる。
「最悪」
銀髪の女が楽しそうに笑う。
「何が?」
「アンタみたいなのが相手ってこと」
第二席は微笑んだ。
「そう?」
「私は楽しみだけどなぁ」
無数の魔法陣。
無数の使い魔。
妖しく笑う銀髪。
メグは杖を構えた。
「後悔させてやる」
「できるかな?」
◇
最後の空間。
静かな草原。
カレンと第一席だけが向かい合っていた。
風が吹く。
沈黙。
そして。
第一席が剣を抜く。
美しい。
無駄のない抜刀。
その動作だけで分かる。
強い。
圧倒的に。
「神権騎士団団長」
男が初めて口を開いた。
「良い剣だ」
カレンも剣を構える。
「ありがとうございます」
「だが」
第一席の瞳が細くなる。
「まだ未熟だ」
次の瞬間。
姿が消えた。
カレンの目が見開かれる。
速い。
そして。
鋼と鋼が激突した。
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