第77話:最弱の魔法
グラディウスとの激闘から数十分後。
崩壊した地下空洞の一角。
百華繚乱の面々は瓦礫の上で休息を取っていた。
「はぁぁぁ……疲れたぁ……」
メグが地面へ大の字になる。
「まさか四神傑があんな強いなんて……」
「ですが、撃退には成功しました」
カレンが微笑む。
「青真のおかげです」
「いや」
青真は首を振った。
「俺は指示を出しただけだ」
その言葉に一同が黙る。
青真は苦笑した。
「第五師団長戦もそうだった」
「神権騎士団戦もそうだった」
「グラディウス戦もそうだ」
未来予知。
意念伝達。
気配察知。
戦況把握には優れている。
だが。
敵を倒す決定打がない。
「軍師としては優秀なんだろうけどさ」
青真が空を見上げる。
「いつか限界が来る」
「……」
「もし俺だけになったら勝てない」
その言葉にメグがむくりと起き上がった。
「じゃあ魔法覚えれば?」
「は?」
「だから魔法」
「いや簡単に言うなよ」
「簡単だよ」
メグが胸を張る。
「私が教えるし」
「お前が?」
「その顔やめて」
数分後。
メグは青真を広い場所へ連れてきた。
「初心者向けならこれかな」
杖をくるりと回す。
「無属性魔法」
「マナショット」
小さな光弾が飛んだ。
ポン。
近くの岩に当たり消える。
「弱っ」
「弱いよ」
メグが即答した。
「最弱クラスだもん」
「そこまで言う?」
「事実だし」
ルシウスが頷く。
「確かに弱いですね」
カレンも頷く。
「弱いですね」
闇風も頷く。
「弱いですね」
「だからなんで追い打ちかけるの!?」
メグが叫んだ。
それでも青真は興味深そうに光弾を見る。
「無属性ってことは」
「応用が利く?」
「まあね」
メグが頷く。
「属性干渉が無いから自由度は高いよ」
「ふーん」
青真が笑う。
その顔を見たメグは嫌な予感がした。
「何考えてるの?」
「実験」
「やっぱり」
青真は魔力を練る。
マナショット発射。
ヒュン。
光弾が飛ぶ。
その瞬間。
「曲がれ」
光弾が少しだけ軌道を変えた。
「え?」
メグが固まる。
「今曲がった?」
「曲がったな」
「いやいやいや!」
メグが青真を見る。
「普通そんなことしないよ!?」
「できたぞ」
「できたじゃないの!」
さらに青真は二発目を放つ。
「散れ」
パッ。
一つの光弾が五つへ分裂した。
スーパーボール程度の小さな弾。
「はぁ!?」
「散弾か」
青真が呟く。
五発の弾は岩へ命中した。
パチパチパチパチ。
威力は低い。
だが。
「面白いな」
「面白くない!」
今度は青真が目を細める。
「戻れ」
五発の弾が空中で方向転換。
中央へ集まる。
一つになる。
ドン。
岩に命中。
「収束もできるな」
「なんで初日で出来るの!?」
メグの叫びが地下空洞に響く。
青真はさらに魔力を込める。
「圧縮」
光弾が縮む。
ビー玉ほどのサイズ。
発射。
ドッ。
岩に小さな穴が開いた。
「威力が少し上がった」
「本当に少しだけね」
メグがツッコむ。
だが青真は満足そうだった。
次。
「炸裂」
着弾。
パン!
風船が割れたような音。
小さな衝撃波。
「地味だな」
「地味だね」
「地味ですね」
「地味ですね」
「地味ですね」
「なんで全員で言うの!?」
しかし。
青真は笑っていた。
「面白い」
「え?」
「この魔法」
未来予知発動。
四秒先。
さらに応用。
さらに改良。
可能性。
「伸びるな」
青真が呟いた。
「誰も研究してないだけだ」
その時だった。
空間が裂けた。
全員が即座に戦闘態勢へ移る。
「っ!」
「来ます!」
赤黒い転移門。
見覚えのある魔力。
その中から現れたのは。
アルゴだった。
「やあ」
相変わらずの笑み。
その後ろから。
大剣を担いだ男が現れる。
グラディウス。
しかも傷はほぼ消えていた。
「次は負けねぇ」
闇風が目を細める。
「回復したのですか」
「神権騎士団を舐めるな」
グラディウスが笑う。
そして。
さらに二つの影が転移門から現れた。
長い銀髪の女性。
黒い外套を纏った男。
百華繚乱の誰も知らない。
だが。
その存在感だけで分かった。
強い。
グラディウスと同格。
いや。
それ以上かもしれない。
アルゴが静かに口を開く。
「紹介しよう」
空気が張り詰める。
「アイアングリッチ最強戦力」
銀髪の女性が微笑む。
黒衣の男が無言で立つ。
グラディウスが肩を鳴らす。
そして。
アルゴが告げた。
「我ら四神傑だ」
百華繚乱の前に。
ついに。
アイアングリッチ最強の四人が揃った。
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