第76話:軍師の一手②
「奥義――粉砕衝波」
グラディウスが大剣を振り下ろした。
次の瞬間。
地下空洞全体を揺るがす破壊の衝撃波が放たれる。
轟音。
崩落。
爆風。
全てを粉砕する死の波が百華繚乱へ襲いかかった。
だが。
「右へ飛べぇぇぇ!!」
俺の叫びが響く。
未来予知で見た四秒後の未来。
その情報を頼りに全員が反射的に飛び退く。
直後。
ドォォォォォォン!!
俺たちがいた場所が吹き飛んだ。
地面が抉れ。
岩盤が砕け。
巨大なクレーターが生まれる。
もし一瞬でも遅れていたら全員即死だった。
「はぁ……はぁ……」
メグが顔を青くする。
「なんなのよあれ……!」
「まだです!」
カレンが剣を構える。
「来ます!」
グラディウスが突進した。
大剣を振るう。
【衝撃】
空気が爆ぜる。
カレンが弾き飛ばされる。
だがその瞬間。
俺は未来予知を発動した。
見える。
四秒後。
赤いログ。
【衝撃】
その直後。
【粉砕】
(やっぱりだ)
確信した。
同時発動じゃない。
衝撃と粉砕は別々の権能だ。
だからこそ。
切り替えの瞬間がある。
「皆!」
意念伝達を繋ぐ。
『作戦があります!』
『本当!?』
メグの声。
『グラディウスは無敵じゃない』
全員が息を呑む。
『衝撃と粉砕は同時には使えません』
『切り替えの一瞬に隙があります!』
グラディウスが笑った。
「何をごちゃごちゃ言ってやがる」
大剣が振り上がる。
俺は叫んだ。
『今からその隙を作ります!』
未来予知発動。
四秒先。
行動選択。
修正。
再確認。
勝利のルートを組み上げる。
「闇風さん!」
「承知しました」
闇風が消えた。
【隠密】
完全潜伏。
グラディウスが鼻を鳴らす。
「またそれか」
背後から闇風が迫る。
グラディウスが反応。
【衝撃】
その瞬間。
「今です!」
カレンが飛び出した。
「飛翔斬撃!」
白銀の斬撃が放たれる。
グラディウスは即座に迎撃。
【粉砕】
斬撃が砕ける。
だが。
その一瞬。
切り替えが発生した。
「メグ!」
「任せて!」
巨大なゴーレム出現。
【魔人形創造】
ゴーレムが拳を叩き込む。
グラディウスが迎撃。
【粉砕】
ゴーレム破壊。
しかし。
その直後。
「ルシウスさん!」
「ここです!」
聖剣が閃く。
神聖属性の斬撃。
グラディウスが迎撃しようとした瞬間。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
神の術式が空白になった。
「そこだ!」
俺が叫ぶ。
カレン。
闇風。
ルシウス。
メグ。
全員が同時に動く。
飛翔斬撃。
短剣。
聖剣。
ゴーレムの残骸。
全てが一点へ集中する。
「ぐっ!?」
初めて。
グラディウスの表情が変わった。
直撃。
大剣が弾かれる。
体勢が崩れる。
「馬鹿な……!」
俺は笑った。
「見つけたんだよ」
グラディウスが睨む。
「何をだ」
「お前の弱点を」
未来予知が映した。
衝撃。
粉砕。
切り替え。
その僅かなラグ。
第五師団長のような理不尽な権能じゃない。
二つを重ねているだけだ。
だから隙が生まれる。
「百華繚乱!」
俺は叫ぶ。
「総攻撃です!」
全員が駆ける。
グラディウスも迎え撃つ。
だが。
もう遅い。
未来予知。
意念伝達。
百華繚乱最大の武器。
連携が完成した。
「飛翔斬撃!」
「神聖斬!」
「そこです!」
「ぶっ飛べぇぇ!」
連続攻撃。
ついに。
グラディウスの巨体が膝をついた。
沈黙。
地下空洞が静まり返る。
「……ハッ」
グラディウスが笑った。
血を吐きながら。
「面白ぇ」
立ち上がろうとする。
だが。
その時。
空間が裂けた。
赤い魔法陣。
見覚えのある転移門。
そこからアルゴが姿を現す。
「十分だ、グラディウス」
「アルゴか」
「目的は果たした」
アルゴが眼鏡を押し上げる。
「これ以上の戦闘は不要だ」
グラディウスは舌打ちした。
「まだやれる」
「分かっている」
アルゴは静かに答える。
「だが時間の方が重要だ」
その言葉に。
俺の胸騒ぎが強くなる。
時間?
何のための?
転移門が広がる。
グラディウスの姿が飲み込まれる。
そして。
アルゴもまた消えた。
静寂。
戦闘は終わった。
百華繚乱の勝利。
ーー時間。
その裏で何かが進んでいる。
そんな嫌な予感だけが胸に残っていた。
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