第72話:終焉
第一部隊が動いた瞬間、玉座の間はこれまでとは別次元の戦場へ変わった。
「前衛展開!」
ゼクトの号令と共に騎士達が一斉に踏み込む。
その動きは異常だった。
誰一人として無駄な動きをしない。
誰かが攻撃すれば即座に援護が飛ぶ。
誰かが下がれば別の者が穴を埋める。
まるで一つの巨大な生物だ。
「くっ!」
カレンの剣が騎士を捉える。
だが次の瞬間には別の騎士が割り込み攻撃を受け流した。
「また!?」
「連携が速すぎる!」
メグが叫ぶ。
ゴーレムで突破しようとしてもすぐに陣形を変え対応してくる。
闇風の奇襲も読まれる。
ルシウスの聖剣も止められる。
アルゴは上空から静かに眺めていた。
【解析進行率:81%】
数字が上昇する。
「見事だよ」
アルゴが呟く。
「だが君達の戦術は既に分析済みだ」
俺は舌打ちした。
最悪だ。
第一部隊だけでも厄介なのに。
その前に立つ男。
神権騎士団団長オーディン。
そいつが圧倒的だった。
「来るぞ!」
未来予知。
四秒後の視界が流れ込む。
白銀の剣。
一直線。
俺の首を断つ軌道。
「避けろ!」
俺が叫ぶ。
直後。
オーディンが消えた。
ドォォォォォン!!
衝撃。
カレンが剣で受け止める。
だが押し負ける。
「ぐっ……!」
床が砕ける。
「馬鹿な……!」
カレンは百華繚乱最強の前衛だ。
そのカレンが力負けしている。
オーディンは表情一つ変えない。
「良い剣だ」
振り下ろす。
轟音。
吹き飛ぶカレン。
俺は即座に未来予知を発動。
四秒後。
ルシウスが斬られる。
「右だ!」
叫ぶ。
ルシウスが回避。
剣が掠める。
しかし。
「ほう」
オーディンが俺を見る。
「未来を見るか」
背筋が凍った。
見抜かれている。
「だがそれだけだ」
次の瞬間。
ゼクトが動いた。
「全隊、第三陣形」
騎士達が一斉に配置転換する。
未来予知。
視界が流れ込む。
だが。
見えた未来が次々と変わる。
「なっ……」
ゼクトが陣形を変える度に未来が書き換わる。
まるで戦場全体を操作しているようだった。
「青真!」
カレンが叫ぶ。
「こいつ私達の連携を潰してる!」
その通りだった。
ゼクトは強くない。
だが指揮能力が異常だ。
俺と同じ。
軍師タイプ。
「面白いな」
ゼクトが笑う。
「未来予知か」
「……」
「だが戦場を支配するのは情報だけじゃない」
騎士達が突撃する。
俺達も迎撃。
激突。
轟音。
魔法。
剣撃。
全てが入り乱れる。
その中で俺は気付いた。
未来予知で見える最大は四秒後。
だが。
ゼクトの指揮も四秒単位で変化している。
つまり。
「そういうことか」
俺は笑った。
「何?」
カレンが振り向く。
「ゼクトは俺を潰そうとしてる」
未来予知で先を見る。
↓
ゼクトが読む。
↓
陣形変更。
↓
未来が変わる。
つまり。
未来予知対策。
完全に俺専用だ。
アルゴが拍手した。
「流石だ」
【解析進行率:85%】
「そこまで理解するか」
だが。
その瞬間。
俺は逆に勝機を見つけた。
「カレン!」
「何!?」
「団長を抑えろ!」
「は!?」
「十秒でいい!」
カレンは理解できない顔をした。
それでも。
信じて動く。
「分かった!」
飛び出す。
オーディンへ。
激突。
轟音。
ルシウスも加勢。
闇風も援護。
メグもゴーレムを投入する。
全員で団長を抑える。
その間。
俺はゼクトだけを見る。
未来予知発動。
四秒後。
発動。
四秒後。
発動。
四秒後。
発動。
連続使用。
頭痛が走る。
視界が揺れる。
だが構わない。
ゼクトの癖を読む。
指揮の順序。
判断基準。
思考パターン。
全てを観察する。
そして。
見えた。
「そこだ」
闇風が踏み込む。
「何っ!?」
初めてゼクトの顔色が変わった。
指揮官は自分が狙われることを想定していない。
「ぐっ……!」
第一部隊隊長ゼクト。
撃破。
その瞬間だった。
第一部隊の連携が崩壊した。
「今だ!」
カレンが叫ぶ。
メグのゴーレムが騎士達を吹き飛ばす。
闇風が斬る。
ルシウスが聖剣を振るう。
第一部隊壊滅。
残るは。
神権騎士団団長。
オーディンのみ。
「見事だ」
オーディンが笑った。
初めてだった。
この男が笑ったのは。
「だがまだ終わらん」
膨大な魔力が噴き出す。
床が砕ける。
天井が震える。
「団長……!」
騎士達が驚愕する。
アルゴですら目を細めた。
「本気か」
オーディンが剣を構える。
「最後に全力で応えよう」
未来予知。
四秒後。
見える。
敗北。
四秒後。
敗北。
四秒後。
敗北。
だが。
その未来の中に。
一つだけ。
勝利があった。
「全員!」
俺が叫ぶ。
「合わせろ!」
百華繚乱。
ルシウス。
全員が動く。
カレンの斬撃。
闇風の奇襲。
メグのゴーレム。
ルシウスの聖剣。
そして。
俺の未来予知。
全てを重ねた総攻撃。
オーディンの剣が砕ける。
「なに……!?」
初めて驚愕。
次の瞬間。
全攻撃が直撃した。
轟音。
閃光。
爆発。
そして。
神権騎士団団長オーディンのHPがゼロになる。
「見事だ……百華繚乱……」
身体が光へ変わる。
消滅直前。
オーディンは上空を見上げた。
「四神傑アルゴ殿」
その言葉に全員が反応する。
「四神傑……?」
カレンが呟く。
俺もアルゴを見る。
アルゴは静かに眼鏡を押し上げた。
そして。
初めて笑った。
「紹介が遅れたね」
【解析進行率:88%】
「私は四神傑第四席」
玉座の間が静まり返る。
「アルゴ」
その言葉と共に。
リベラルワールドでの戦いは新たな局面へ突入する。
四神傑。
アイアングリッチ直属最強の四人。
本当の戦いは。
ここから始まるのだった。
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