第71話:神権騎士団最強
モルドが消滅した玉座の間には重い沈黙が流れていた。
第三部隊。
第二部隊。
神権騎士団の主力を立て続けに撃破したはずだった。
だが誰一人として油断していない。
理由は単純だった。
上空に浮かぶアルゴが、まるで焦っていないからだ。
「素晴らしい」
アルゴは静かに拍手した。
【解析進行率:74%】
赤いログが視界に浮かぶ。
「第三部隊も第二部隊も突破するとは思わなかった」
「だったら諦めろ」
カレンが剣を向ける。
しかしアルゴは首を横に振った。
「いや、まだ終わっていない」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴ……
玉座の間の奥で巨大な扉が開き始めた。
今までのどの扉よりも巨大。
まるで王の間へ続く門だった。
そして。
そこから現れた男を見た瞬間。
全員の表情が変わる。
重厚な白銀の鎧。
腰には長剣。
身長は二メートル近い。
派手な威圧感はない。
だが。
立っているだけで分かる。
強い。
圧倒的に。
「……なるほど」
ルシウスが息を呑んだ。
「この者が」
男はゆっくりと歩く。
その後ろから二十名ほどの騎士たちも現れた。
数は少ない。
だが全員が異様な魔力を放っている。
「神権騎士団第一部隊」
アルゴが紹介する。
「そして」
男が立ち止まる。
「神権騎士団団長オーディンだ」
空気が凍った。
カレンですら言葉を失う。
メグも息を呑む。
闇風の目が細くなった。
そして。
未来予知が警鐘を鳴らす。
危険。
危険。
危険。
未来が真っ赤に染まる。
「まずい……」
思わず声が漏れた。
第五師団長以来だ。
ここまで強烈な警告は。
オーディンは俺を見た。
「お前が百華繚乱の軍師か」
低い声。
それだけなのに威圧感が凄まじい。
「そうだ」
「良い目をしている」
オーディンは静かに頷いた。
「だからこそ理解できるはずだ」
その瞬間。
第一部隊の騎士たちが一斉に動く。
完璧な陣形。
完璧な配置。
そして。
全員の身体が淡く発光した。
「全体強化」
オーディンが呟く。
次の瞬間。
騎士たちの魔力が跳ね上がった。
「バフスキル!?」
メグが叫ぶ。
しかしそれだけでは終わらない。
騎士たちがまるで一つの生物のように動き始めた。
前衛。
中衛。
後衛。
全員が完璧な連携を取る。
一人が動けば全員が反応する。
「なによこれ……」
カレンが顔をしかめる。
俺も理解した。
嫌になるほど。
「百華繚乱と同じだ」
全員の表情が変わる。
そう。
似ている。
意念伝達こそ使っていない。
だが。
連携。
判断。
配置。
戦術。
まるで百華繚乱を模倣したかのような部隊だった。
アルゴが笑う。
「気付いたかい」
【解析進行率:76%】
「君たちを研究した成果だよ」
嫌な予感が現実になる。
アルゴは戦っていなかった。
ずっと観察していた。
そして。
俺たちの戦い方そのものを分析していた。
「なるほど」
オーディンが剣を抜く。
「これがお前たちか」
白銀の刀身が光る。
未来予知を発動する。
だが。
見えた未来に俺は息を呑んだ。
第一部隊が動く。
カレンが押し返される。
闇風が包囲される。
ルシウスが負傷する。
そして。
最後。
オーディンの剣が俺の首へ届いていた。
「っ!」
未来予知を解除する。
嫌な汗が流れる。
勝てる未来が少なすぎる。
「青真?」
メグが不安そうに見る。
俺は答えられなかった。
その時だった。
第一部隊の中から一人の騎士が前へ出る。
黒髪の青年。
鋭い目付き。
腰には双剣。
明らかに他の騎士とは格が違う。
オーディンが口を開く。
「第一部隊隊長ゼクト」
青年が静かに頭を下げる。
「お初にお目にかかる、百華繚乱」
その視線が俺へ向く。
「軍師同士、話をしてみたかった」
背筋が寒くなる。
こいつも。
指揮官タイプだ。
「面白いな」
ゼクトが笑う。
「どちらの戦術が上か試そうじゃないか」
オーディンが剣を構える。
第一部隊も陣形を完成させる。
そして上空ではアルゴが静かに見下ろしていた。
【解析進行率:78%】
神権騎士団最強。
第一部隊。
そして団長。
神権騎士団との最大の戦いが、ついに幕を開けた。
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