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第70話:軍師の一手

「私を倒す確率と、この娘が死ぬ確率をな」

モルドの嘲笑が玉座の間に響く。

短剣はメグの首元へ突き付けられたまま。

黒い拘束鎖も解けない。


神権騎士団の騎士たちは勝利を確信したように笑っていた。

「青真……」

カレンが悔しそうに唇を噛む。

闇風も動けない。

ルシウスも剣を構えたまま停止している。

一歩でも動けばメグが危険だ。

それが分かっているから誰も動けない。


だが俺は静かに息を吐いた。

未来予知の中で何度も確認した。

短剣はメグの首元へ突き付けられたまま。

誰も動けない。


カレンが悔しそうに拳を握る。

闇風も殺気を押し殺している。

ルシウスも剣を構えたまま停止していた。

未来予知を発動する。

何度も未来を見る。

助けようとすればメグが傷付く。

強引に突っ込めば失敗する。


だが――。

たった一つだけ。

勝利へ繋がる未来があった。

「どうした?」

モルドが笑う。

「策士殿も打つ手なしか?」

俺は顔を強張らせた。

わざとだ。

未来予知で見た通りに。


「……くそ」

悔しそうに拳を握る。

「終わりだな」

モルドが勝ち誇る。

「所詮はガキの集まりか」

さらに笑う。

完全に油断していた。


自分が勝ったと思い込んでいる。

その瞬間。

意念伝達を発動。

(メグ)

(青真?)

(落ち着いて足元を見ろ)

一瞬の沈黙。

そしてメグが気付く。

(これ……拘束座標?)

(そうだ)

メグの目が見開かれる。


拘束魔法は対象を固定する。

つまり位置情報も固定される。

それは逆に言えば――。

創造座標を確定できるということ。

(やれるか?)

(……うん!)


メグが小さく笑った。

その表情を見た瞬間。

俺も確信する。

勝った。

「何がおかしい?」

モルドが眉をひそめる。

次の瞬間だった。


「人形創造!」

玉座の間が震える。

モルドの足元から巨大な魔法陣が展開された。

「なっ!?」

遅い。

完全に油断していた。

ドゴォォォォォォォォン!!


超大型ゴーレムが地面を突き破って出現する。

出現座標は。

モルドの真下。

未来予知で導き出した唯一の勝利ルートだった。

「ぐああああああっ!?」

モルドだけが吹き飛ぶ。

メグは無事だった。


ゴーレムの肩へ乗る形で救出されている。

「メグ!」

カレンが駆け寄る。

「大丈夫!」

メグが叫ぶ。

拘束鎖は完全に破壊されていた。

「馬鹿な……!」

吹き飛ばされたモルドが立ち上がる。


「なぜだ!?」

「お前の負けだ」

「何を言っている!」

「拘束魔法は対象を固定する」

俺は冷静に言う。


「つまり座標も固定される」

モルドの顔色が変わる。

理解したのだ。

自分の魔法の欠点を。


「人質を取った瞬間、お前はメグの能力を封じた気になっていた」

カレンが笑う。

「でもメグは動けなくても戦えるのよ」

「そんな馬鹿な話が……!」

「あるんだよ」

その瞬間。


闇風が消えた。

モルドが振り向く。

遅い。

背後。

「終わりだ」

双剣が閃く。

ズシャァッ!!

「がああっ!」


さらに正面からルシウス。

神聖剣が振り下ろされる。

「裁きを受けろ!」

ドォォォン!!

HPが大きく削れる。


「まだだ……!」

モルドが叫ぶ。

だがその時。

カレンが飛び込んだ。

今度は遠慮しない。

「これはメグの分!」

飛翔斬撃。


暴風を纏った斬撃が直撃する。

モルドのHPバーが消し飛んだ。

「そん……な……」

膝をつく。

「私は……第二部隊隊長だぞ……」

「知るか」

闇風がトドメを刺した。

モルドの身体が光へ変わる。

神権騎士団第二部隊隊長モルド。

討伐完了。


残された騎士たちは動揺し、その場から崩れ落ちた。

しかし。

「実に興味深い」

上空から拍手が聞こえる。

アルゴだった。

【解析進行率:74%】

数字がまた上昇している。


「拘束魔法の仕様を逆利用するとは」

眼鏡の奥で瞳が細められる。

「やはり君たちは面白いな」

俺は剣を握り直した。

第三部隊。

第二部隊。

二つを突破した。


だがアルゴはまだ余裕を崩さない。

その態度が不気味だった。

そして次の瞬間。


玉座の間の奥から、さらに重い気配が現れる。

今までの隊長たちとは明らかに格が違う。

「どうやら」

アルゴが静かに告げた。

「第一部隊も待ちきれなくなったらしい」

その言葉と共に、巨大な扉がゆっくりと開き始めた。

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