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最強ゲーマーの《多世界攻略録(マルチバースアーカイブ)》  作者: 紅柳
第二部仮想世界編 第一編 隔離世界編
46/150

第46話:訓練所とアプローチ

不気味なノイズの残響と、あの因縁の『錆びた歯車』の幻影を頭の片隅に残したまま、俺たちは『冒険者訓練所』の重厚な門をくぐった。

内部は広大な修練場となっており、多くのNPCの教官たちが、初心者プレイヤーを相手に武器の振り方やスキルの初歩を熱心に指導している。


「よし、それじゃあ各自、自分の職業の教官のところへ行って新スキルの確認をしてこよう。メグは錬金術師、カレンは剣士、闇風は暗殺者、俺は戦術士だな。後でここで合流しよう」

「はーい、面白い薬品のレシピがあるといいなー」

「WISTERIAさん、遅れないように戻ってきます!」

3人がそれぞれ目的の教官のもとへ走っていくのを見送り、俺も奥にある「戦術士・参謀」の看板が掲げられたエリアへと向かった。そこにいたのは、いかにも知略に長けていそうなモノクルをかけた老人のNPC教官だった。


「ほう、見習い戦術士の若者か。レベル3に達したな。お主に相応しい新たな智慧を授けよう」

教官が俺の杖に手をかざすと、システム音が鳴り、視界に新しいスキルの習得通知がポップアップした。

『新スキル【気配察知(Lv.1)】を習得しました』

「【気配察知】……?」

俺がそのスキルアイコンを凝視すると、詳細テキストが表示される。


『周囲に存在する動体の気配や、自身に向けられる明確な敵意・殺意を直感的に感知する』

「なるほど……。このゲームには最初から親切な『索敵メーター』があるが、このスキルはそれとは別物、プレイヤー自身の五感を拡張するタイプか」

俺が呟くと、老教官は深く頷いた。


「さよう。目に見えるメーターなど、まやかしに過ぎん。真の戦術士は、空気の肌感覚で戦場を支配するものじゃ」

その言葉は、NPCのセリフとは思えないほど重く、俺の胸に突き刺さった。さっき街の雑踏で感じた、あの予測ラインを歪める謎の視線。もしあの時このスキルがあれば、相手の正確な位置を割り出せていたかもしれない。この過保護な世界で、システムに依存しない「本物の感覚」を養うための、俺にとって極めて重要な第一歩となるスキルだ。


数十分後、合流地点に戻ると、3人はすでに新しい能力を試したくてウズウズした様子で待っていた。

「青真くん! 私は剣士のパッシブスキルで、攻撃の出始めの隙をさらに減らす【微切】を覚えました!」


カレンが嬉しそうにレイピアの柄をトントンと叩く。相変わらず前衛としての純粋な火力を高めていくスタイルのようだ。

「私はね、ポーションの投擲距離と弾道を安定させる【精密投擲】よ。これで『フラムポーション』の命中率がグッと上がるわ。……で、闇風は?」


メグが話を振ると、闇風は少し照れくさそうに自分の短剣を見つめた。

「俺は、敵の背後に一瞬で回り込む【影踏み】という移動スキルを覚えました。WISTERIAさんの指示した位置へ、さっきよりずっと早く移動できるようになります!」

「それは頼もしいな。みんな、着実に戦力が上がっているようで何よりだ」


俺たちがそれぞれの成長を喜び合っていると、訓練所の掲示板の前が、急にガヤガヤと騒がしくなった。プレイヤーたちが集まり、何やら驚きの声を上げている。

「おい、見たかよこれ……。次の公式クエスト、推奨レベルが『10』になってるぞ!?」

「マジかよ、まだみんなレベル3か4なのに、いきなりそんな難易度跳ね上がるのか!?」

プレイヤーたちの騒ぎ声を聞き、俺たちも掲示板へと近づいた。


そこに貼られていたのは、運営から全プレイヤーに向けて発行された、次なる攻略目標――『忘却の地下迷宮・上層』の探索クエストだった。

確かに、推奨レベルは『10』と明記されている。

普通のゲームバランスならあり得ない急激な難易度の上昇。だが、周囲のプレイヤーたちが困惑し、恐れをなしている中で、俺の隣に立つ3人の目は違っていた。


「推奨レベル10……。ふん、システムがどれだけ脅かしてこようが、青真の指揮があれば関係ないわよね」

メグが不敵に口元を釣り上げる。

「はい。WISTERIAさんの【予測演算】があれば、レベルの差などただの数字に過ぎません。俺たちの技術で、その壁を叩き潰してみせます」

闇風の瞳には、一切の迷いも恐怖もなかった。あるのは、俺への絶対的な信頼と、戦いを楽しむガチ勢としての熱い闘志だけだ。


「よし、みんなが良いなら決まりだ。推奨レベル10のダンジョン……俺たちの本当の力が、どこまで通用するか試してやろう」

俺の言葉に、3人が力強く頷く。

レベルが10に達すれば、俺の【予測演算】をはじめ、みんなの初期スキルが『進化』する。この無茶な難易度のダンジョンこそ、あの黒幕たちの意図を暴き、一気に化けるための最高の舞台になるはずだ。


過保護な世界のルールを、俺たちの実力でハッキングしてやる。そう決意を新たにし、俺たちは次なる戦場への準備を始めるのだった。

読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

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