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第40話:始まりの世界へ

【緊急措置:イレギュラーオブジェクトの排除のため、サーバーの『強制フルリブート(初期化)』を実行します】


血のような赤に染まったコンソール画面。そこから放たれた無機質なシステム音声がタワーの最上階に響き渡った瞬間、俺――青真の脳内の予測演算タクティカル・フォーサイトは、すべての計算式が限界を迎えて弾け飛ぶのを感じた。

「しまっ……! 奴ら、現実の上書きが失敗したと分かった瞬間、システムそのものを強制終了させやがった!」


「青真、これってどういうことなの!? データの吸い上げは止まったのに、タワーのエネルギーが、外じゃなくて『内側』に逆流してきてろ!」

メグがノートPCを抱えながら悲鳴を上げる。

「端末を壊しても間に合わない! 運営は、この場にいる俺たちの『データ(意識)』を直接、元のゲームサーバーへ強制的に隔離・転送(BAN)する気だ!」


俺たちの足元の床が、激しいデジタルノイズと共に次々と消失し、底知れない光の深淵へと変わっていく。

「そんな……っ! ここまで来て、また運営の理不尽な仕様に邪魔をされるなんて……!」

カレンが悔しそうに歯を食いしばり、消えゆく床の上でバランスを崩した。


「チッ、身体が動かねぇ……! 重力や物理のコードそのものが、システムから遮断されていってやがる!」

闇風が自分の手を睨みつける。その身体は、指先から徐々にポリゴンの粒子となって崩れ始めていた。

運営という絶対的な神の権限。


現実を護り抜き、チェックメイトまで追い詰めたはずの俺たちは、最後の最後で、運営の「卓をひっくり返す」ような最悪の悪あがきによって、世界のプラットフォームから強制的に弾き出されようとしていた。


「みんな、怖がるな! 意識を保て!」

俺は消失していく空間の中で、声を限りに叫んだ。

「肉体は蓮会長やアイギスが現実世界で絶対に護ってくれる! 飛ばされた先は、俺達が誰よりも知り尽くしたあの『世界』だ! 運営の思い通りには絶対にさせない! そこでレベルを上げ、仕様をハックし、今度こそ運営の喉元を掴みに行って現実に戻るぞ!」


「はい……! 青真がいるなら、私はどこへだって付いていきます!」

カレンが光に呑まれながらも、信頼に満ちた目で俺を見つめた。

「MMOの攻略なら、俺たちの本領発揮だからな……!」

闇風が不敵に笑う。

「大元のサーバーに乗り込むなら、私のハッキングの本番はこれからよ!」


メグも涙を拭い、強く頷いた。

直後、視界のすべてが純白の光で埋め尽くされた。

現実の街の風景、夜空の紫色、自分の肉体の感覚。そのすべてが完全に消失し、俺たちの意識は暗黒のネットワークの奔流へと突き落とされた。


どれほどの時間が経っただろうか。

不意に、俺の耳元で、かつて耳にタコができるほど聞いた、あの懐かしくも忌々しいゲームのタイトルBGMが鳴り響いた。

【ようこそ、オンラインRPG『リベラル・ワールド』へ】

【プレイヤーの精神データを検出。初期化処理を実行します】

【警告:システムエラー。既存のプレイスタイルが固有スキルとして承認されました】

【青真:固有スキル【予測演算(Lv.1)】を付与】

【現在のレベル:1】


ゆっくりと目を開けると、そこは現実の東京ではない。

見渡す限りの広大な青空、不自然に浮遊する岩塊、そして中世ファンタジー風の石造りの広場――あの「最大最悪の仮想世界」の、始まりの街だった。

隣には、同じように目を覚まし、自分の格好に驚いているカレン、闇風、メグの姿がある。

レベルは1に戻された。だが、俺たちの経験も、絆も、何一つ消えちゃいない。


「待ってろよ、クソ運営。今度はこっちから、お前たちの世界をハめ殺しに行ってやる」

青真は、初期装備の杖を掲げ、広大に広がる仮想世界の大地を見据えて不敵に笑った。

読んでいただきありがとうございました!これで第一部「現実世界編」は完結となります。次話からは第二部の「仮想世界編」となります。引き続き応援お願いします!

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