第28話:リアルハックの幕開け
アスファルトに刻まれる急ブレーキの重低音。
蓮会長が完璧なハンドルさばきで滑り込ませたリムジンから、俺たちは一斉に夜の街へと飛び出した。
「カレン、闇風、前方のガソリンスタンド前にいるのはサイバーレギオンの武闘派アタッカーだ。だけど、問題はそいつらじゃない」
俺――青真は、素顔のまま鋭い眼光でリムジンのルーフを見上げた。
そこには、先ほど天井をナイフで切り裂いてきた、黒いライダースーツの刺客が音もなく着地している。その身のこなし、そして一切の迷いがない殺気。
「ハッキング戦で奴らの連携パターンは完全に読めてる。ルーフの奴が上空からの急襲を仕掛けるのと同時に、前方の集団が突撃して挟み撃ちにする算段だ。典型的な『挟撃のハメ仕様』だな」
「上と前からの同時攻撃ですか……! でも、青真の演算があるなら、ただのカモですね!」
カレンが不敵に微笑み、愛用の木刀を正眼に構える。
「ああ。カレンはそのまま上空の刺客を迎撃。闇風は前方の集団を足止めしろ。メグは俺の後ろでドローンの残弾チェックだ!」
「了解! 錬金術師のサポート、見せてあげる!」
メグが丸メガネをクイと押し上げ、ノートPCのキーボードを叩いてドローンのバックアップ体制に入る。
「よし、演算開始――。カレン、1.5秒後に上空の奴がナイフを逆手に持って急降下してくる。落下軌道は右斜め30度、そこへ『一条流』の最大出力を合わせろ!」
「はいッ!!」
指示と同時に、ルーフの刺客がバネのように跳ね上がり、夜空を背に猛スピードでカレン目掛けて突き落ちてきた。
だが、カレンは一切動じない。青真が告げた「1.5秒後」のタイミングに完全に合致させて、木刀を凄まじい風切り音とともに振り抜いた。
「一条流――『旋風・剛破』ッ!!」
ガギィィィンッ!!!
強化ガラスをも粉砕するカレンの強烈な一閃が、空中から迫るナイフの刃を完璧に捉えた。衝撃波が周囲の空気を震わせ、刺客の武器を消し飛ばす。そのまま圧倒的な打撃力が刺客の体幹を打ち抜き、男はガソリンスタンドの看板に向かって派手に吹き飛んでいった。
「次は前方の集団だ! 闇風、3秒後にトンファー持ちが左から回り込んでくる。突進の慣性をそのまま利用して、右への『合気投げ』の仕様にハめ込め!」
「……了解」
闇風が音もなく地を蹴り、前方のライダースーツの集団へと突っ込む。
敵の男が特殊合金のトンファーを振り回し、闇風の頭部へ強烈な一撃を叩き込もうとした瞬間だった。
闇風は男の攻撃を紙一重でかわすと、その衣服の袖と手首を完璧なタイミングで捕らえた。
フッ、と闇風が息を吐くと同時に、トンファー持ちの男は自分の突進速度がそのまま倍加したような凄まじい勢いで宙を舞い、アスファルトへ激しく叩きつけられた。
「な、なんだあいつらの動きは……!? 完全にこちらの動きを先読みしてやがる!」
サイバーレギオンのアタッカーたちが、想定外の返り討ちに一瞬で狼狽し始める。
どれだけ強靭な肉体と戦闘技術を持っていようが、青真の脳内計算によって「攻撃の軌道」も「タイミング」も全てハッキングされている状態では、彼らの攻撃はただの確定行動(覚えゲー)にすぎない。
「形勢逆転だ。カレン、闇風、そのまま一気に残党をハめ殺すぞ!」
青真の鋭い号令とともに、百華繚乱の完璧な反撃が幕を開けた。
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